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追突事故で過失0(ゼロ)だと保険会社は示談対応をしてくれない
実は、停車中に後方から追突されたというような、自分に全く過失のない追突事故(もらい事故)では、自分の加入している保険会社に加害者側との示談交渉をしてもらうことができません。

このような過失割合が0(ゼロ)の場合に、自分1人で示談交渉を行わなければなりません。
その場合には次のようなデメリットがあるでしょう。
- 納得のいく額の慰謝料が受け取れない可能性がある
- 慣れない保険会社とのやり取りに疲れてしまう
- 思わぬ不利益を受けることもある
自分1人で示談交渉を進める場合、納得のいかない金額の慰謝料しか受け取れないおそれがあります。
また、慣れない保険会社とのやり取りで自分の思い通りに交渉が進まず、精神的に疲れてしまう人が多いのも事実です。
さらに、思わぬ不利益を受ける可能性もあります。交通事故の時効期間は物損事故の場合は3年、人身事故の場合は5年です。
この期間を過ぎてしまうと損害賠償金の支払い、後遺障害認定を受けることができなくなってしまいます。
そこで、こうした事態を未然に防ぐために、弁護士に依頼するのも1つの手です。
示談交渉の手続きの代行をしてもらうことができますし、交通事故に関する知識も被害者より豊富なため、不利益を被る可能性も低くなるでしょう。

追突事故の慰謝料の金額を決める3つの基準
交通事故に遭った場合、加害者に対して損害賠償金の請求をすることが可能です。この損害賠償金には、慰謝料が含まれます。
交通事故の慰謝料を決めるにあたって、次のいずれかの基準が用いられます。
慰謝料の3つの基準 | |
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自賠責保険基準 | 自賠責保険の支払い基準 |
任意保険基準 | 保険会社の支払い基準 |
弁護士基準 (裁判基準) | 裁判になった場合や、弁護士が被害者の代理人になって保険会社に請求する場合の支払い基準 |
加害者が任意保険(自動車保険)に加入していないときは、自賠責保険基準によって慰謝料額が計算され、被害者が弁護士に示談を依頼すると弁護士基準で計算されることになります。
請求できる慰謝料額は一般的に、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準の順番で高くなっていきます。
なお、被害者の慰謝料額を弁護士基準で計算する場合、同じような事故については同じような判断がなされます。
これは、似た内容の事故で受け取れる慰謝料額が異なるのは、不公平だというのが理由です。
提示された損害賠償金の金額に不満を持った場合、示談に応じずに裁判を起こすことも可能です。
一般の人でも裁判を起こして、弁護士基準により慰謝料額を算定してもらえば、納得のいく額の損害賠償金を受け取ることができます。
ただし、法律に詳しくない一般の人が手続きを進めて、裁判所から適切な認定を受けるのは難しいでしょう。
そのため、実際には弁護士の力を借りる必要があります。

交通事故の被害者Aさんの場合
Aさん(他覚症状はなし)
入院期間は3ヶ月・通院期間は6ヶ月(実通院日数60日)
Aさんの場合の慰謝料相場
自賠責保険基準 | 113万4千円 |
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任意保険基準 | 119万8千円 |
弁護士基準 | 211万円 |
※1ヶ月を30日として計算。
※相場は症状によって変わるので、あくまでも一例で最高額ではない。
※任意保険基準と弁護士基準は基準表をもとに算出。
どの基準を適用するかだけでなく、通院期間の長さも、請求できる慰謝料に大きく影響します。
通院期間が長いほど、慰謝料額が多くなる傾向があります。
追突事故の慰謝料には、厳密には相場というものはありません。
しかしAさんの例からわかるように、一般的に弁護士基準での算出によって、慰謝料額の増額を目指せます。
交通事故の慰謝料の計算方法や相場については以下の記事で詳しく紹介しています。

追突事故の場合、物損事故ではなく人身事故として届け出る

追突事故に遭った人は、体に痛みがなくても必ず人身事故として警察に届け出るようにしましょう。
物損事故として届け出ると、慰謝料を請求することができません。
なぜなら、交通事故の慰謝料は、交通事故に遭ったときに発生する精神的損害や精神的苦痛に対する損害賠償金だからです。
もうすでに物損事故で届け出た人も、事故発生から数日内(※事故後7〜10日くらい)に警察に届け出をすれば、物損事故から人身事故への切りかえに応じてもらえる場合があります。
事故発生からの期間が開きすぎると、事故とケガとの関連性が不明などの理由で人身事故への切りかえに応じてもらえない可能性が高くなるので、注意しましょう。
追突事故の慰謝料と被害者の年収の関係は?主婦の場合も変わる?

前述のように、慰謝料とは交通事故に遭ったときに発生する精神的損害や精神的苦痛に対する損害賠償金です。
職業によって精神的損害や精神的苦痛が異なるわけではありません。
ただし、慰謝料は変わらないものの、休業損害(休業補償)は違います。
- 休業損害とは
交通事故によって仕事を休まなければならなかったときに、その休業によって発生した損害のことです。
これは、被害者の事故前の収入によって大きく変化します。
この点、専業主婦でも休業損害はもらえます。
専業主婦でも休業損害を請求できる理由は、家事や子育てには、経済的な対価があるとされているからです。
家事や子どもの世話など、ケガをしていなければできることがたくさんありますよね。
専業主婦(家事従事者)の休業損害は、事故前の収入はないので、全年齢の女性の平均賃金(賃金センサスの女子労働者の平均賃金)を用いて基礎収入を計算します。
パート主婦(兼業主婦)の場合、平均賃金よりも給料が高いときには給料分の休業損害になります。
しかし、平均賃金を割っていたときには、専業主婦と同様の休業損害になります。
追突事故でむちうちになった場合に慰謝料を得る方法は?
そもそもむちうちとは?

後ろから車が追突してきたとき、身体だけが無理に前方に押し出される動きをします。
しかし、頭はそのままの位置に留まろうとするため、頸椎にゆがみが生じてさまざまな後遺症が現れるのです。
これを一般的にむちうちと呼びます。
むちうちで追突事故の慰謝料を受け取るためのポイント
むちうちになった場合、以下の理由から慰謝料の請求が難しくなるケースがあります。
- むちうちは他覚症状がなく、他人にはわからない
- 事故直後には痛みがなく後から症状が出て、事故との関連性を疑われてしまう
実は、追突事故で起こる軽いむちうちは、他人からは分からない症状であることが多いです。
そして厄介なことに、レントゲンやMRIなどを撮っても、異常なしと判断されてしまうこともあります。
また、事故直後には痛みがなく病院に行かなかったが、後から痛みが出てきたというケースもあるようです。
事故後しばらく経ってから症状が出てきたので病院に行ったという場合、事故との関連性を疑われてしまうことがあります。
これらの理由からむちうちと認められず、慰謝料を請求することができないという事態が発生します。
そこで、慰謝料を請求するためにも、事故にあったらなるべく早めに病院(整形外科)へ行き、適正な診察と治療を受けましょう。
追突事故の慰謝料はいつ支払われる?一連の流れを紹介
下の図では示談交渉が終わり、示談金(損害賠償金)を受け取るまでの流れを示しています。

追突事故に関する疑問を解決

タクシーとの追突事故の場合はどうなるの?
タクシーに追突された場合、運転手ではなく、タクシー会社と示談交渉することになります。
妊娠中に起きた追突事故はどういった扱いになるの?
妊婦が追突事故の被害に遭った場合、お腹の子どもには慰謝料請求権がありません。
しかし、大切な子どもを失った場合には精神的苦痛として、また、子どもに後遺症が残ってしまった場合には後遺障害として慰謝料を請求することができます。
追突事故で廃車になった場合、全額負担してもらえるの?
この場合、被害者は対物保険の保険金を請求することができます。
しかし、請求できるのは新車購入時の金額ではなくて、その車の時価になります。
レンタカーで追突事故に遭った場合、どういう扱いになるの?
被害者がレンタカーに乗って追突事故に遭ったとき、自分の車の場合と同様、加害者側の保険会社に損害賠償請求を行います。
ただし、営業補償の意味合いがあるノンオペレーションチャージ(NOC)については、被害者側が負担をすることになります(※加害者への請求は可能という判例がある)。
加害者がレンタカーに乗っていたときは、一般に車両を借りるときに保険に加入するはずなので、保険会社がその運転者に代わって損害賠償請求をする相手となります。
同乗者にも慰謝料は適用されるの?
家族などの同乗者がいる場合、運転者と同様、慰謝料を請求することができます。
助手席や後部座席など、どこに座っていたのかは関係ありません。
追突事故に遭ったら、弁護士費用特約を使って弁護士に相談を
ご自身が加入している保険に「弁護士費用特約(弁護士特約)」がついている場合、弁護士依頼のための費用を、保険会社に支払ってもらうことができます。
弁護士費用の保証は最大で300万円に設定されています。その限度額を超えて費用が発生したときには自己負担となります。
自分に過失がない追突事故では自分で示談交渉をしなければならず、不安になることも多いと思います。
不安を解消し納得のいくように示談を進めるためにも、弁護士への依頼を検討してもよいでしょう。
<弁護士特約のメリット・デメリット> | |
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メリット | ・示談交渉の手続きを、弁護士に代行してもらえる ・弁護士基準が適用されるので、受け取る損害賠償金の増額を目指せる |
デメリット | ・弁護士費用特約の限度額が一般的に300万円ほどに設定されていて、それを超えて発生した費用は自己負担になる |

- 人身事故扱いにしなければ慰謝料が受け取れない
- 過失がない場合は自分で示談交渉をしなければならない
- 弁護士基準で計算すると慰謝料が増額できる
- 弁護士特約を使えば弁護士費用を保険会社に負担してもらえる
2018.03.26 公開