2020.4.28 更新

交通事故で労災保険は使える?労災を利用する方法と慰謝料への影響

「仕事中に交通事故にあった場合は労災保険が使えるの?」
「労災が使えないケースは?」

通勤中や仕事中に交通事故の被害者となってしまったときには、労災保険の適用が可能です

交通事故にあったときは他にも自賠責保険も適用できますが、業務中であれば労災保険にメリットが多くあります。

もしかすると「労災保険を利用すると会社に迷惑がかかるのでは?」とお思いの方もいるかもしれません。

しかし労災保険の利用は働く側の権利として認められているものなので、勤務先に対して遠慮をする必要はありません。

スムーズに労災保険を利用するためにも、手続きのやり方や補償内容について把握しておきましょう。

また、自賠責保険との違いや、労災保険を利用したときに慰謝料に与える影響についても解説していきます。

通勤中や仕事中に交通事故にあってしまった…労災保険を使おう!

労災保険とは、労働者が勤務中や通勤中にケガや病気、死亡したときに保険金として治療費や修理費を補償する制度です。

「工場の機械でケガをした」ような業務に関わる事故だけでなく、通勤や移動中に起きた交通事故でのケガにも適用可能です。

では、さらに具体的にどんなケースなら労災保険が適用可能かについて紹介していきます。

労災保険が使えるケース・使えないケース

労災保険には正式には労働者災害補償保険といい、従業員を1人でも雇用している事業所であれば強制加入となっています。

どこかの会社で雇われている場合には、通勤中や仕事中に交通事故にあってしまったときに、労災保険を利用できます。

また労災保険が適用されるかどうかは、交通事故と業務との因果関係があるかという点で判断されます。

ただ、状況によっては労災保険を使えないケースもあるので、基本的なポイントを押さえておきましょう。

労災保険が【使える】ケース
 
通勤途中に交通事故にあった
→自宅と就業場所との往復も、労働の一部と見なされるので労災保険が適用される
 
会社の車で取引先に向かう途中で事故にあった
→業務中に起こったものは、業務災害と判断されるので労災保険が適用される
 
具合が悪くなったので早退し、病院で診察を受けた後に事故にあった
→「日用品の購入およびその他これに準じる行為」となるため通勤災害として認められ、労災保険の対象となる。

労災保険が【使えない】ケース
 
通常の通勤経路から大幅に外れている
→たとえば、帰宅途中に外食するために店に立ち寄ったり、映画館に行ったりした場合は通勤とは見なされない。
 
休日中に事故にあった
→勤務中ではないため、交通事故と業務の因果関係がなく、労災保険は適用されない。

雇用形態は関係がないので正社員だけでなく、契約社員や嘱託社員、アルバイトやパート、日雇い労働者でも利用可能です。

ただ、業務委託の場合は労働者ではないため、労災保険を使うことはできません

また、労災保険と同じように自賠責保険によっても補償は受けられますが、労災保険と自賠責保険を二重に利用することはできません

労災保険は業務上に被った損害を補償するもので厚生労働省が管轄しており、自賠責保険は交通事故の損害に対する補償目的で国土交通省が管轄しています。

どちらの保険を利用するかは、労働者自身が決められる点も押さえておきましょう。

業務上の事故なら労災を遠慮せずに使う

労災保険の利用は労働者の権利として認められているものであり、勤務先に遠慮をして申請をためらう必要はありません。

工場で働いている方が工場内で負傷したなどあれば、会社の安全管理が問われるケースもあるでしょう。

しかし交通事故の場合は会社の安全管理とは別の問題です。そのため基本的に会社に迷惑がかかるわけではありませんし、嫌な顔をされることはないでしょう。

労災保険の請求は勤務先と保険会社との間で手続きが進められるので、労働者は安心して治療に専念できます。

仮に、会社側が労災保険の申請に応じてくれない場合には、労働基準監督署に相談をしてみましょう。

労災保険を利用したときに受けられる補償の種類

交通事故にあって、労災を利用したときに受けられる補償としては、以下のものがあげられます。

補償の種類 概要 給付の範囲
療養補償 療養を必要とするときに支払われるものであり、労働者に対して直接給付される。健康保険の場合とは違って、病院での窓口負担はない ・診察
・処置や手術その他の治療
・薬剤または治療材料の支給
・療養に伴う看護
・移送
休業補償 労働ができない状態であり、賃金が減らされた場合や賃金の支払いを受けられない場合に給付される。 ・休業4日から数えて、1日あたりの給付基礎日額(平均賃金に相当する金額)の60%が支払われる。
・さらに、休業特別支給金として20%が加算される。
障害補償 症状固定(治療を継続しても症状の改善が見られない状態)後に一定の障害が残ったときに支給される。 障害補償年金は第1~7級、障害補償一時金は第8~14級の障害で該当するものが支払われる。
傷病補償 療養補償を受ける労働者が、1年6ヶ月を経過しても治らないときに、障害の程度に応じて支給される。 第1級では給付基礎日額の313日分、第2級では277日分、第3級では245日分が支給される。
介護補償 障害補償年金・傷病補償年金の第1級もしくは第2級(精神・神経障害および胸腹部臓器障害者の者に限る)の受給者で、介護を必要とする場合に支給される。 常時介護で月額10万4,590円、随時介護で月額5万2,300円を上限として支給される。
遺族補償 業務災害または通勤災害で労働者が死亡したときに、遺族に対して給付される。遺族補償年金と遺族補償一時金とがある。 労働者が死亡した時点の生計維持関係や続柄、遺族の年齢などによって給付額は異なる。

労災保険のメリットは多い!自賠責保険との比較

給付が増える!労災保険を利用するメリット

業務上の災害として交通事故にあってしまったときには、さまざまなメリットが受けられる労災保険を利用したほうがよいでしょう。

ケガで仕事を休んだときには入通院をして4日目から、給付基礎日額の60%の休業補償が労災保険によって受けられます

ちなみに、初めの3日分(待機期間)と残りの40%分は加害者側が負担をします。

さらに、労災保険からは給付基礎日額の20%に相当する特別支給金が追加で支払われるため、手厚い給付が受けられるのです。

そして、後遺障害認定を受けると障害一時金のほかに、障害特別支給金が労災保険から支給されます。

障害特別支給金は、加害者側から支払われる損害賠償金とは相殺されません。

また、第7級以上の後遺障害認定を受けると、障害特別年金が支給されます。

たとえば、第7級であれば1年間で給付基礎日額の131日分が受け取れる制度です。

治療においては、労災保険で診療を受けた場合には被害者本人の窓口負担がないため、自賠責保険の枠(最大で120万円)を有効活用できるメリットもあります。

労災保険と自賠責保険の比較

労災保険と自賠責保険では、治療費の負担額や給付水準などに違いがあり、まとめると以下のような表になります。

なお、自賠責保険については2020年4月1日以降の新基準で作成しています。

補償の種類 労災保険 自賠責保険
療養補償 全額支給 120万円まで
休業補償(休業損害) 給付基礎日額の60%×休業した日数 1日あたり6,100円
休業特別支給金 給付基礎日額の20%×休業した日数 なし
入通院慰謝料 なし 日額4,300円×入通院日数※120万円まで
傷病補償 傷病等級に応じて支給。傷病補償年金・傷病特別支給金・傷病特別年金がある。 なし
障害補償(後遺障害慰謝料) 障害等級第1~14級に応じて支給される。障害補償給付・障害特別支給金・障害特別年金がある。 後遺障害の等級によって異なる。
後遺障害逸失利益 なし 基礎収入×労働能力喪失率×労働可能年数に対するライプニッツ係数
遺族補償 遺族補償年金は遺族の人数に応じて支給される。遺族補償一時金は、給付基礎日額×1,000日分。他に、遺族特別支給金・遺族特別年金・遺族特別一時金がある。 遺族の人数によって支給される。
死亡慰謝料 なし 本人分として400万円
死亡逸失利益 なし (年収もしくは年相当額-生活費)×死亡時の年齢における就労可能年数のライプニッツ係数
葬祭料 「31万5000円+給付基礎日額×30日分」もしくは、「給付基礎日額×60日分」の多いほうが支給される。 100万円
介護補償 常時介護・随時介護の状態に該当した場合に支給される。 なし
特別受給金 二次健康診断等給付 なし

自賠責保険においては自由診療扱いとなるため、治療費の負担が大きくなりますが、労災保険の場合は治療費の負担は低く収まる傾向にあります。

また、労災保険では過失相殺が適用されないので、自分の過失割合が大きい場合には労災保険を利用したほうが良いでしょう。

そして、労災保険は示談が成立していなくても支給されるため、加害者側と揉めている場合や自賠責保険だけしか加害者側が加入していない場合には、労災保険を利用してみましょう。

通勤中や仕事中のケガでは健康保険は利用できない

健康保険は、業務以外の理由でケガをしてしまったときに利用できる保険です。

そのため、通勤中や仕事中に負ってしまったケガでは健康保険は使えません

健康保険法第1条と第55条によって定められているものであり、業務災害でのケガは労災保険を利用しましょう。

もしも、健康保険を間違って使ってしまったときには、医療機関に支払った診療報酬相当額(自己負担分が3割なので残りの7割)を全国健康保険協会(協会けんぽ)に返還したうえで、労災保険に切り替える必要があります。

領収書や請求書などの支払いを示す書類や第三者行為災害届、事故証明書・念書・示談書(示談が成立しているとき)などの書類が必要になります。

後から労災保険に切り替えるときには、一時的に治療費の全額を自己負担しなければならないため、充分に気をつけておきましょう。

手続きは難しい?労災保険の利用方法

では、ここからは労災保険の利用方法についてお話ししていきます。

病院で治療を受けるときには、まずは「労災保険を利用したい」と医師にきちんと伝えることが大切です。

労災指定医療機関を利用したうえで、「療養補償給付たる療養の給付請求書」もしくは「療養給付たる療養の給付請求書」を提出する必要があります。

届出を行うことで労災保険からの給付が受けられるので、書類に漏れがないようにチェックしましょう。

もし、労災指定を受けていない医療機関で診療を受けるときには、被害者がいったん治療費の全額を立て替えて、後から労災保険に対して支払った分の請求を行うことになります。

医療機関に「療養補償給付たる療養の給付請求書」もしくは「療養給付たる療養の給付請求書」を渡して、診療内容を記載してもらいます。

さらに治療費の領収書を添付したうえで、労働基準監督署に提出すれば、数ヶ月後に治療費が振り込まれる仕組みとなっています。

慰謝料には影響がある?労災保険と慰謝料の関係

慰謝料はあくまでも、交通事故によって被害者が受けた精神的ダメージを加害者が賠償する意味合いで支払われるものです。

したがって、労災保険を申請したからといって、慰謝料の請求には影響がありません。

労災保険にない補償項目(慰謝料や逸失利益など)でも、加害者側に請求できます。

また、慰謝料の請求は自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準の3つのいずれかで、加害者側に請求します。

3つの基準の中では自賠責保険基準が最も低く、弁護士基準が最も高いのが特徴です。

ただ、弁護士基準は弁護士に依頼をすることで適用されるものであるため、納得できる慰謝料を請求したいときには相談をしてみましょう。

そして、同じ補償項目について二重取りすることはできないので、場合によっては慰謝料額が減額される可能性もあります。

どの補償項目が自分にあてはまるのかを把握するためにも、弁護士のサポートを受けることは有効な方法です。

ベストな選択をするために弁護士に相談しよう

労災保険の手続きは勤務先が行ってくれるものですが、担当者が手続きに不慣れな場合には申請がスムーズに進まないこともあります。

労災認定を受けた後に後遺障害認定を受ける必要があるため、さらに手続きに時間がかかってしまう場合もあるでしょう。

労災保険の手続きに困ってしまったときには、交通事故事案に詳しい弁護士に相談みるのも1つの方法です。

加害者側の保険会社とのやりとりや後遺障害認定の手続きを任せられるので、治療に専念できます。

加入する任意保険に弁護士費用特約が付いていれば、弁護士への支払いを気にせずに済むので、ベストな選択をするためにも専門家の力を借りてみましょう。

まとめ

通勤中や仕事中に交通事故にあってしまったときには、健康保険が利用できないので、労災保険を利用します。

労災保険は労働者の権利であり、適用を申請したからといって慰謝料の請求に影響を与えるものでもありません。

受けられる補償範囲が広いので、どのような補償が自分に該当するのかを把握しておくことが大切です。

労災保険の手続きは勤務先が行ってくれるものですが、何らかの理由で手続きに悩んでしまったときには、交通事故事案に詳しい弁護士に相談をしてみましょう。

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