2020.9.11 更新

交通事故の裁判、和解や解決に至る期間はどのくらい?

交通事故の示談交渉が難航していて、裁判に持ち込むことを検討しています。 でも裁判って、何年もかかるイメージがありなかなか踏み切れません。実際どれくらいの期間がかかるのでしょう?
交通事故の裁判に要する期間は、事故の状況や、和解が成立するかどうかによって大きく変わります。早ければ半年、長ければ1年以上かかるケースもあります。まずは裁判のプロセスを、しっかり理解する必要があります。
交通事故の示談交渉がまとまらないときには、裁判に持ち込むことで解決を図ることができます。 とはいえ、裁判を起こすのは何かとハードルが高く、解決までに時間がかかるのではと心配する人も多いでしょう。 確かに、裁判では解決まで1年以上の期間を要することも少なくありません。しかし、裁判によって確実に事態を解決でき、交渉による解決よりも高額での解決が期待できるといったメリットがあります。 示談交渉が難航しているなら、裁判という選択肢も視野に入れておくべきでしょう。 ここでは、交通事故裁判の期間やプロセス、具体的な手続きや、裁判をスムーズに進めるためのポイントとして、弁護士を活用すべき理由などを紹介していきます。

交通事故裁判のプロセスを理解しよう

裁判の流れ 交通事故の示談交渉では、示談金(損害賠償金)の額が折り合わなかったり、事故の過失割合でもめたりして、容易にまとまらない場合も少なくありません。 当事者同士の話し合いで解決できないときには、裁判に持ち込むことで解決を図ります。 交通事故による損害賠償請求などの裁判は「民事訴訟」と呼ばれ、被害者と加害者が、互いの主張を証拠とともに提示するのが基本的な流れです。 お互いの主張を一通り「口頭弁論」で主張すると、多くの場合、裁判所から「和解」が勧告されます。和解が成立しない場合は、さらに審議を重ねて、最終的な「判決」に至ります。

交通事故裁判にかかる期間をプロセスごとに解説

ここからは、交通事故裁判のプロセスごとに、その内容やおおよその期間を説明していきます。

訴状の提出

裁判を起こすには、まずは「訴状」を裁判所に提出しなければなりません。 訴状には、加害者に対し、どのような理由で損害賠償を請求をするのかを明記します。 訴状の提出先は、
  • 損害賠償金額が140万円以下であれば簡易裁判所
  • 損害賠償金額が140万円を超えれば地方裁判所
になります。 訴状の作成は被害者自身でも行えますが、弁護士に依頼することも可能です。交通事故事案を専門とする弁護士であれば、スムーズに裁判に持ち込めるでしょう。

弁論準備(資料集め)

裁判所に訴状を提出すると約1ヶ月後に、口頭弁論の日程が決まります。 口頭弁論が行われる日までに、弁論のための資料集めを行う必要があります。 集めるべき資料としては、医師の診断書・後遺障害の等級認定結果・検査資料・証拠書類(給与明細書や領収書)などが挙げられます。 ただしこれらはあくまで一例です。 裁判で必要になる証拠書類は、できるだけ多くの証拠書類を提出して、交通事故によってどのような損害が出ているかを証明しましょう。

口頭弁論

口頭弁論では、被害者と加害者の双方が証拠を提出して、どちらの主張が正しいのかを争っていきます。 加害者側は、本人ではなく、加入する保険会社の担当者を代理人に立てる場合があります。専門知識を持った相手と弁論で争うのはハードルが高いため、被害者側も弁護士を代理人に立てた方が、裁判を有利に進めやすくなります。 1回の口頭弁論にかかる時間は30分~1時間程度です。ただ、口頭弁論は裁判官が十分と認めるまで何回も続き、月1回ほどのペースで行われます。 口頭弁論の回数が多くなるほど裁判は長引くため、状況によっては判決を得るまでに1年以上かかってしまうのです。

和解勧告

裁判では、早期に問題を解決させるため、判決へと至る前に、裁判所が両者に和解勧告を行うことがあります。 和解が成立しない場合には、裁判官が被害者と加害者の双方に質問をする「尋問」へと進みます。

判決

尋問が終了すると、さらに和解案が提示されることもありますが、それでも決着がつかない場合には、判決期日に判決が下されます。 裁判所による判決は、法的な拘束力を持つものです。 もし、判決の内容に納得がいかないときには、2週間以内に控訴を行います。 被害者・加害者のどちらかが控訴をした場合には、第二審が行われます。 三審制という仕組みが採用されているため、同じ内容の裁判を3回まで起こすことが可能です。 しかし控訴するためには、一度下った判決を覆すくらいの新しい証拠書類が必要になります。また裁判の回数が多くなれば、問題の解決までにさらに時間がかかってしまいます。 そのため実際に交通事故裁判で控訴審で争われるケースは少なく、控訴の判断は慎重に行う必要があるでしょう。 どちらも控訴しなかった場合、判決が確定します。

慰謝料(損害賠償金)の支払い

判決や和解内容に賠償金の支払いが命じられている場合には、加害者から被害者に対して決められた金額の賠償金が支払われます。 加害者が加入する保険会社から、約10日以内に振り込まれます。

交通事故裁判が長引くケース3つ

裁判にかかる期間は、事故の状況などによって変わってくるものです。 ケースごとの裁判期間の違いについて解説していきます。

物損事故と人身事故による裁判期間の違い

交通事故では、物損事故か人身事故かによって、裁判期間が大きく変わります。 人身事故の場合は物損事故に比べて、賠償の対象となる項目が多い傾向にあります。そのため、裁判での争点も多くなり、結果として裁判が長引くことが多いのです。 ただ、裁判期間を短くしたいからといって、被害者がケガを負っているにもかかわらず、あえて物損事故として届け出るのは避けるべきです。 物損事故扱いにしてしまっては、
  • 賠償金が少なくなる
  • 後遺障害への慰謝料が支払われない
  • 過失割合で揉めた際に実況見分調書が出ない
などのデメリットが生じます。 安心して治療が行えない状況になる可能性もあるので、交通事故でケガを負った場合には人身事故として届け出ましょう。

後遺障害が残る場合の裁判期間

交通事故によって後遺障害が残る場合、裁判期間は長期化しがちです。なぜなら、後遺障害が残るかどうかは、治療がある程度進まないと確定できないケースが多いからです。 特に時間がかかるのが、慰謝料を算定する目安となる「後遺障害等級」の認定です。 後遺障害は、等級が一段階異なるだけでも、賠償金額に大きな差が生まれます。 このため、認定結果に納得できない場合には、異議申し立てを行うことになり、裁判期間にも影響を与えることになります。
後遺障害の異議申し立てについては、別の記事で詳しく説明しているので、そちらも参照ください。 後遺障害の等級認定に納得いかない! 異議申し立てを成功させるポイントは?

死亡事故の場合の裁判期間

死亡事故の場合には、被害者本人が原告となることができません。民法の定めによって、相続人となる遺族が原告となります。 こうした場合、遺族感情や慰謝料の高さから、裁判期間が長くなるケースが多くなります。 また、死亡事故では、被害者が死亡したタイミングも裁判の争点となります。 即死の場合には事故と死亡の因果関係は明白ですが、事故後に入院して死亡するケースもあります。 事故が発生してから死亡に至るまでの期間が長いときには、事故と死亡の因果関係が裁判で争われる場合もあるでしょう。 死亡するまでの治療費や休業補償などの算定も必要になるので、裁判が長引いてしまうのです。
死亡事故の慰謝料については、別の記事で詳しく説明しているので、そちらも参照ください。 交通事故の死亡慰謝料相場|相続や慰謝料計算方法を紹介【ご家族用】

交通事故裁判にかかる費用

裁判に持ち込むかどうかを判断するには、時間や労力だけでなく、費用の負担についても意識しておく必要があります。 裁判を行うために最低限必要となる費用は、「収入印紙代」と「郵便切手代」で、トータル1~5万円程度です。裁判所に訴状を提出するときに、一緒に支払うことになります。 収入印紙代は、加害者(被告)に請求する金額(訴額)によって決まっています。 郵便切手代は、被告が1名の場合は5,000円程度かかり、被告が1名増えるごとに2,000円程度が追加でかかります。 なお、裁判によって全面勝訴となった場合には、裁判費用は加害者側の負担となります。 また、弁護士に依頼をするときには弁護士費用が必要になりますが、成功報酬のため、赤字にはなりません。
交通事故裁判にかかる費用については、以下の記事で詳しく解説しています。 「交通事故の裁判ではどのくらい費用がかかる?裁判で後悔しないための方法」

交通事故裁判を起こすべきかどうかの判断基準

交通事故裁判を起こすためには、時間と費用がそれなりにかかってしまうため、必ずしも裁判をするのが良いとは限りません。 しかし、場合によっては裁判をするほうが望ましいケースもあります。 2つのポイントから、裁判を起こすべきかの判断基準について解説します。

裁判することで納得できる慰謝料が得られる可能性も

裁判を起こすことで、納得のいく慰謝料を得られるケースもあります。 裁判における慰謝料は「自賠責保険基準」や「任意保険基準」ではなく、「弁護士基準(裁判基準)」で算定されます。 弁護士基準で算出すると慰謝料の金額が高くなる傾向にあり、納得できる慰謝料を得たい場合には裁判を検討するのも1つの選択肢です。 慰謝料の算出は個人では難しい面もあるので、裁判を起こす前に弁護士に相談をしてアドバイスを受けることも念頭に置いておきましょう。 交通事故の慰謝料の計算方法については、別記事で詳しく説明しているので、そちらも参照ください。
交通事故の慰謝料計算方法は、以下の記事で詳しく解説しています。 「【保存版】交通事故の慰謝料相場はいくら?必ずわかる計算方法まとめ」

裁判でかえって期間が短くなるケースも

示談交渉では、加害者が話し合いに応じないなどの理由で、容易に結論が出ないこともあります。 過失割合に納得ができなかったり、慰謝料の金額が大きかったりすれば、交渉が難航してしまうケースもあるでしょう。 このような場合には、裁判所という第三者を交えることによって、当事者双方が納得できる結論を導き出せる可能性もあるのです。 判決に至るまでの過程で、和解案という形で早期に結論を得ることも可能です。

事例で見る!交通事故裁判によって慰謝料が納得できる金額に

交通事故裁判の結果や、解決までに要した期間については、実際に起きた事例が参考になります。 裁判に至った経緯や裁判期間、損害賠償額などについて2つの事例を紹介しますので、参考にしてください。

CASE1.居眠り運転による死亡事故の事例

◆平成20年10月29日  仙台地方裁判所
裁判期間 1年1ヶ月(平成19年9月頃に申し立て、平成20年10月29日に判決)
損害賠償額 約7,895万円(死亡慰謝料2,400万円、逸失利益4,282万円、遺族固有の慰謝料300万円など)
加害者の居眠り運転によって起こった事故で、被害者は脳挫傷によって死亡しました。 被害者の車が青信号の交差点を走行していたところに、居眠り運転をしていた加害者の車が赤信号に気づかず衝突した事故で、過失割合は0(被害者):10(加害者)となりました。 被害者は事故当時40歳男性で、将来得られるはずだった報酬分を基礎収入額に計上することで、逸失利益を増額できました。 また、被害者の父母に対する遺族固有の慰謝料も認められています。

CASE2.学生の慰謝料請求の事例

◆平成14年8月19日  名古屋地方裁判所
裁判期間 1年10ヶ月(平成12年10月頃に申し立て、平成14年8月19日に判決)
損害賠償額 約1億8,927万円(治療費150万円、慰謝料2,800万円、逸失利益6,795万円、将来の介護費用7,226万円など)
加害者の車が制限速度を大きく上回る速度で走行し、対向車線を走っていた被害者の車と正面衝突した事例です。 この事故は加害者の重大な注意義務違反によって起こったものとされ、過失割合は0(被害者):10(加害者)となりました。 当時学生だった被害者は後遺障害1級3号の認定を受け、裁判によって将来得られるはずだった報酬が逸失利益として支払われました。

交通事故裁判には弁護士のサポートが必要

交通事故裁判は、少なからぬ期間を要するため、すべての手続きを自分一人で行うのは、時間や心理的な負担も大きくなります。 裁判での負担軽減を図るため、弁護士に相談することも検討してみましょう。

被害者に有利な「弁護士基準」で慰謝料を算定

交通事故裁判において、慰謝料の算定は事故後の生活に大きな影響を及ぼします。 弁護士に裁判をサポートしてもらうことで、「弁護士基準(裁判基準)」での賠償額を加害者に請求できます。 自賠責保険基準や任意保険基準よりも、高額となる傾向にあるので被害者にとって有利になります。

専門的な知識に基づき万全の準備で弁論に臨める

裁判は事実に基づいて判決が下されるものです。だからこそ正確な証拠の提示が不可欠。交通事故裁判では、書類を作成したり、証拠書類を集めたりと、多くの準備を必要とします。 正しい主張であっても、証拠を提示できなければ、不利な状況に陥る可能性があります。 交通事故の裁判や判例について専門知識を持った弁護士であれば、心強い味方となるので安心できます。 弁護士に依頼すれば、裁判に必要な万全の準備を整えられるので、有利に弁論を進めることができます。

代理人として手続きを任せられる場面も

裁判が長引くほど、たびたび裁判所に出向かなければならず、被害者にとって大きな負担となります。しかし、弁護士を代理人として立てれば、被害者本人の負担を軽減できます。 また、実際の裁判では、裁判所の独特な雰囲気に圧されたり、裁判官が発する専門用語がわからず、せっかくの主張が伝わらないケースが多々あります。 弁護士に裁判手続きを任せることで、証言を求められるシーンは少なくなりますし、出廷の負担も減らすことができます。

弁護士費用の負担は削減できる場合も

弁護士に依頼すると、気になるのは費用です。 ただし、裁判で勝訴した場合、弁護士費用は相手に請求が可能です。 また、示談で止める場合でも多くの法律事務所は「成功報酬制」を採用しています。「成功報酬制」とは、弁護士によって示談交渉が成立した時にはじめて、その結果の程度に応じて弁護士への報酬を支払うというものです。 さらに任意の自動車保険に付帯されている「弁護士費用特約」などを利用すれば、弁護士費用は全額補償されます。 「初回の相談料は無料」としている事務所もありますので、まずは相談してみてはいかがでしょうか?

まとめ

交通事故裁判が解決に至るには、準備も含めて多くのプロセスがあり、ケースによっては裁判期間が長引いてしまうこともあります。 裁判期間の長さに、被害者が精神的・肉体的に疲れてしまうこともめずらしくありませんので、裁判の負担を減らし、ケガの治療に専念するためにも、裁判を起こすときには弁護士に依頼することも検討してみましょう。

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