2020.6.12 更新

交通事故の裁判ではどのくらい費用がかかる?裁判で後悔しないための方法

交通事故で裁判をするときの費用の相場

交通事故で裁判を起こす場合の費用は1〜5万円前後

裁判を起こす場合に必ずかかる費用として、裁判所に納める収入印紙代と郵便切手代があります。収入印紙代は訴訟で請求する額(訴額)によって決められており、請求額が大きくなればより多額の収入印紙が必要になります。
いくつか例を挙げると、訴額が100万円の場合は印紙が1万円、訴額が300万円で2万円、500万円で3万円、750万円で4万円、1000万円で5万円となっています。詳細は、裁判所のホームページに訴額早見表という一覧表が掲載されていますので、裁判をお考えの方は参照してください。
これに対し郵便切手は、請求額に関わらず一定の額が必要になります。裁判所によって異なりますが、通常は訴訟提起時に5000円前後(被告が1名の場合。被告が1名増えるごとに2000円分ほど増えます)の郵便切手を納める必要があります。なお訴訟係属中に不足が生じれば、裁判所から追加の切手を納めるよう指示があります。
余った切手は訴訟終了時に返還してもらえます。

交通事故示談が裁判に発展するケースとは

・事故態様(過失割合)について争いがある場合
・後遺障害等級の認定や等級に不満がある場合
・慰謝料のように複数の算定基準があるものについてどの基準を採用するかで争いがある場合
・休業損害や逸失利益の算定の基礎となる収入の算定方法について争いがある場合

以上の例をはじめいろいろなケースが考えられますが、その争点の判断によって最終的に得られる賠償額が大きく変わってしまう場合が裁判に発展しやすいといえるでしょう。
例えば、交差点内の事故でどちらの対面信号が青だったかで争いがあるというような事案の場合、信号表示によって過失割合に大きな差が出る(極端にいえば、被害者と加害者の立場が入れ替わる)ことになるので、双方の主張の隔たりが大きく話し合いで間をとった解決をするのが困難になり、示談が成立せず訴訟に発展することが多いのです。

裁判の費用を安く抑えるのは難しい

裁判にかかる実費(収入印紙、切手)は機械的に計算されるものですから、減額してもらうことはできません。
したがって、裁判費用を安く抑えることはなかなか難しいといえます。
ただし、経済的に困窮しているような場合には、訴訟救助といって訴え提起時には収入印紙を納める必要がなく、裁判終了時まで待ってもらえる制度があります。
訴訟費用は最終的には敗訴者が負担する(裁判所が判決の中で敗訴者に負担するよう命じる)ものですから、全面勝訴した場合には訴訟費用はすべて被告の負担となります。
ですから、訴訟救助を申し立てて勝訴すれば、印紙代を負担しなくても済むということになります。

交通事故で裁判をするメリット

交通事故の被害者が裁判をするメリットとしては、以下の点が挙げられます。

  • ・慰謝料の算定の3つの基準のうちもっとも高い裁判所基準による慰謝料の算定が期待できる
    (示談交渉では、弁護士に依頼しても裁判所基準の額までは届かないこともある)
  • ・後遺障害についてより有利な認定を受けることができる可能性がある
    (示談交渉では、認定された等級に相当する額以上の賠償に保険会社が応じることはまずない)
  • ・事故発生から支払いを終えるまでの間、年3%の遅延損害金を請求することができる
    (法律上は示談交渉でも請求することはできるが、示談では保険会社はまず支払いに応じない。
     3年毎に市中金利の動向により変動)
     示談交渉をしたが成立せず訴訟を提起して判決を得た場合、事故から1~2年(あるいはそれ以上)
     たっていることも珍しくないので支払われる金額が3~9%増えることになる
  • ・弁護士に依頼した場合、損害の1割に相当する金額を弁護士費用として受け取れることがある
    (実際に弁護士に支払った額ではなく、損害の1割を認定する)
  • 交通事故の裁判は弁護士に依頼する方が費用は安くなるのか

    弁護士依頼の際の費用はどのくらいかかる?

    弁護士費用が自由化されたため、事務所によって弁護士費用はまちまちです。
    ただ、以前の日本弁護士連合会の報酬規程(平成16年に廃止)では次のように定められており、現在もこの額が一応の目安になるといっていいでしょう。

    着手金 報酬
    300万円以下 8% 16%
    300万円超え3,000万円以下 5%+9万円 10%+18万円
    3,000万円超え3億円以下 3%+69万円 6%+138万円
    3億を超える 2%+369万円 4%+738万円

    ただし、請求額が少ない場合でも最低着手金は10万円とされていました。
    なお、上の金額はいずれも税別です。
    また、最近は交通事故については着手金無料の完全報酬型の基準を採用している法律事務所もありますので、各事務所のホームページなどで比較してみてください。

    弁護士費用特約に加入していれば費用は0円?

    弁護士費用特約は、自分が加入している保険会社が弁護士費用を払ってくれるもので、交通事故の被害者にとっては大変便利なものです。ただし、たいていの保険会社が弁護士費用の上限を設定しており、法律相談料は1事故につき1名10万円まで、弁護士費用は1事故1名につき300万円までが補償の範囲とされていることが多いようです。
    したがって、弁護士費用がこの範囲内でおさまる場合には自己負担は0になりますが、この範囲を超える場合には、差額を自己負担しなければなりません。
    もっとも、この上限を超えるのは死亡事故や重大な後遺障害がある場合などで、物損事故や人身事故でも後遺障害がないかまたは等級の低い場合には、上限を超えることはほぼありません。

    レンタカーでの事故でも弁護士費用特約は適応される

    多くの弁護士費用特約では、契約車両に乗車中に事故にあった場合に限定せず、広く自動車事故一般(他の車両に搭乗している場合や歩行中に事故にあった場合なども含む)による損害賠償について、契約者に弁護士費用を支払うことになっています。
    ですから、レンタカーを運転中に事故にあった場合でも、被害者が受けた損害の賠償については弁護士費用特約を利用することができることが多いでしょう。詳細については、ご自身の保険契約の約款を確認するか、保険会社に問い合わせてください。

    任意保険未加入で自分で弁護士と対応することになった場合、慰謝料はすんなり払って問題はないのか

    加害者が被害者に直接賠償金を支払った場合、加害者は支払った額を限度として自賠責保険に対し、保険金を請求することができます(これを加害者請求といいます)。自賠責保険の補償は上限が決まっており、傷害の場合は120万円まで、後遺障害がある場合には別途後遺障害の等級に対応する慰謝料などが支払われることになっています。
    したがって、被害者の請求が自賠責保険の範囲内であれば後で回収することができるので、あえて相手方の請求を拒んで長期化させることはないといえるでしょう。

    証拠のない事故の場合、相手の請求額と弁護士費用を払うのではどちらがよいのか

    被害者に請求されている額と、請求額に対応する弁護士費用を比較して判断することになるでしょう。
    例えば物損で10万円請求されているような場合、弁護士費用特約がないかぎり、弁護士に依頼して勝訴しても経済的には赤字になります(一般的に、最低着手金10万円がかかるうえに、勝訴したことにより報酬が発生するため。もっとも、依頼者にとってかえって経済的に不利益になることから、そもそも依頼を受けない弁護士の方が多いでしょう)。
    これは極端な例ですが、相手方の請求が少額であれば、弁護士費用や敗訴のリスク(証拠がない以上、弁護士に依頼しても勝訴できるとはかぎりません)を考慮して、支払いに応じた方が得策であるといえる場合もあります。

    交通事故の裁判で過失割合を争う場合の注意点

    過失割合についての裁判は費用も考慮すべきなのか

    過失割合は民事上の問題であるため、当事者間で合意ができれば合意した割合になり、合意ができない場合には、裁判所の判断を仰ぐことになります。
    ただし、過失割合が争点となる裁判は事案が複雑であるため、被害者本人が訴訟遂行することは難しく、弁護士を依頼した方がいいといえるでしょう。
    弁護士費用特約に入っていない場合には、弁護士費用を自己負担しなければならなくなります。そのため、双方の主張する過失割合によって賠償額にどの程度の差が出るかを計算し、そこから裁判にかかる弁護士費用(上の報酬規程を参考にするか、法律相談に行って弁護士費用の概算を出してもらうといいでしょう)を差し引き、敗訴の場合の経済的リスクも考慮して費用と時間をかけてでも裁判をした方がいいと思うほどの利益があるかを考える必要があるでしょう。

    過失割合が決まらずに裁判になる際は費用がかかるのか

    過失相殺に関する裁判も、当然、費用(裁判所に納める実費や、弁護士を依頼した場合には弁護士費用)がかかります。
    そこで費用を安く抑えるために、一部請求を利用するという方法が考えられます。
    一部請求とは、全体の請求のうちの一部であることを明示してその一部を請求し、後に残部を請求するというものです。
    過失相殺は被害者の全損害を割合的に減額するものですから、被害者が一部請求により一部の損害の項目だけを請求した場合でも、裁判所は過失割合を認定する必要があります。
    裁判所に納める印紙額や弁護士費用は請求額によって決まりますので、まず一部請求をして印紙額や弁護士費用を安く抑え、勝訴した場合には残部を請求することで、最初から全損害を請求し、敗訴して費用が無駄になるリスクを避けることができるのです。

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