2020.5.13 更新
【判例4選】後遺障害1級の慰謝料と事例をケース別に詳しく解説


後遺障害1級に認定されるほどの重傷を負ってしまった場合、慰謝料や逸失利益の計算はとても複雑なものになります。
重度の脳挫傷などによって介護が必要な後遺障害が残ってしまった場合、将来の生活のことなどを考えると正当な示談金を受け取る必要があります。
この記事では、実際に交通事故で後遺障害1級に認定された方の裁判の事例を参照しながら、示談が被害者の方の有利になるポイントについてお伝えします。
- 過去の後遺障害1級の裁判例が知れる
- 示談で注意するべきポイントがわかる
- 示談で請求できることの事例がわかる
目次
後遺障害1級3号の慰謝料はいくら?実際の裁判の事例4つ

後遺障害1級3号の損害賠償額の判例一覧
Case1 | 千葉地方裁判所 (平成18年9月27日) |
38歳 郵便局勤務 男性 |
損害賠償額 約3億1792万円 |
Case2 | 福島地方裁判所 (平成13年12月27日) |
64歳 大工職人 男性 |
損害賠償額 約7163万円 |
Case3 | 名古屋地方裁判所 (平成14年8月19日) |
19歳 専門学生 |
損害賠償額 約1億8927万円 |
Case4 | 名古屋地方裁判所 (平成15年3月24日) |
60歳 男性 |
損害賠償額 約7440万円 |
※こちらの裁判事例は、すべて裁判所Webサイトに掲載されている判例集より引用しております。
【Case1】損害賠償額:約2億9658万円(症状固定時38歳/男性)

飲酒運転による事故
- 歩道の区別のない道路での事故
- 過失割合 0:10
- 脳挫傷・外傷性くも膜下出血・外傷性歯牙脱臼等
- 入院期間299日
- 後遺障害1級3号
事故の詳細
Case1の事故は、加害者が飲酒運転で追越し禁止の道路を直進している際に起こりました。
加害者は前方の路上駐車車両を追い越そうとして対向車線に進出し、戻ろうと加速走行した際に、前方の状況を十分に確認しませんでした。
そして対向車線上で車両を誘導するため立っていた被害者にノーブレーキで衝突したというものです。
ケガの症状
被害者は症状固定し、四肢麻痺・四肢関節拘縮・遷延性意識障害などの後遺障害が残り、「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」として後遺障害等級1級3号に該当するとの認定を受けました。
示談金の総額と詳細
損害賠償額 計 約3億1792万円 | |
---|---|
うち治療費 | 1570万6686円 |
うち逸失利益 | 7244万1811円 |
うち慰謝料 | 3550万円 (傷害分350万円 後遺障害分3200万円) |
うち将来の付添介護費用 | 1億3441万1340円 |

判例のポイント
最愛の家族に四肢麻痺・四肢関節拘縮・遷延性意識障害という重篤な後遺症が残り、今後子供の介護にも当たらなければならず、死亡にも比肩すべき精神的苦痛を被ったと認められました。
このことが考慮され、被害者の両親と子供にはそれぞれ500万円の慰謝料が認められました。
【Case2】損害賠償額:約7163万円(事故当時64歳/大工職人/男性)

勤務中に巻き込まれた事故
- 勤務中の交通事故
- 過失割合 3.5:6.5
- 急性硬膜下血腫、脳挫傷、頭蓋骨骨折、肋骨骨折、血胸の傷害
- 入院199日間、通院35日間
- 後遺障害1級3号
事故の詳細
Case2の事故は、被害者の方が道路の舗装工事に従事していたところ、工事に伴う片側一車線の道路を進行していた加害者の車が被害者の方に衝突し、転倒させてしまったというものです。
ケガの症状
被害者の方は病院で治療後,この事故によって外傷性パーキンソニズムによる運動障害(体幹機能障害及び両手関節,手指の著しい障害)、失語症による言語機能の著しい障害、意思疎通が困難という後遺症が残り、症状固定の診断を受け、後遺障害1級3号と認定されました。
示談金の総額と詳細
損害賠償額 計 約7163万円 | |
---|---|
うち治療費 | 683万824円 |
うち逸失利益 | 2833万4214円 |
うち将来の介護費 | 2883万3759円 |
うち慰謝料 | 3000万円 (傷害分400万円 後遺障害分2600万円) |

判例のポイント
被害者は事故当時64歳ではあるが,大工職人の仕事をしており、当時の所得は413万4478円で平均賃金以上で健康な限り就業可能でした。
そこで被害者は症状固定時(64歳)から69歳までの5年間は事故当時の条件で勤務し続け、当時の年収を得られたものと認められました。
その後の4年間は、「賃金センサス」という厚生労働省が調査した全労働者の平均賃金を基準に計算され、年収317万5800円を得られたものと認められました。
【Case3】損害賠償額:約1億8927万円(事故当時19歳/学生)

専門学生の慰謝料請求の事例
- 車同士が正面衝突した事故
- 過失割合 0:10
- 脳挫傷,右大腿開放性骨折,右血気胸,両膝挫創の傷害
- 入院約4か月
- 後遺障害1級3号
事故の詳細
この事故は、加害者が制限速度を大きく上回る速度で中央線を越えて車を進行させたため、対向車線を進行していた被害者と正面衝突してしまったものです。
加害者の一方的かつ極めて重大な注意義務違反により発生したものであり、被害者側には過失相殺とすべき程の落ち度はなかったものと認められました。
ケガの症状
被害者は症状固定の診断を受け、頭部外傷による四肢痙性麻痺及び高度意識障害が残存し後遺障害1級3号が認定されました。
示談金の総額と詳細
損害賠償額 計 約1億8927万円 | |
---|---|
うち治療費 | 150万9740円 |
うち慰謝料 | 2800万円 (傷害分 200万円 後遺障害分 2600万円) |
うち逸失利益 | 6795万1997円 |
うち将来の介護費用 | 7226万9240円 |

判例のポイント
このケースでは、被害者は当時専門学生であり、卒業後には歯科衛生士として歯科医院に勤務し収入が得られるはずだったと認められました。
そのため症状固定時の「賃金センサス」の短大卒・女子労働者の全年齢平均賃金を基準とした逸失利益が支払われました。
【Case4】損害賠償額:約7440万円(症状固定時60歳/男性)

公共施設利用中の事故
- 市バス乗車中の事故
- 過失割合 1.5:8.5
- 頚椎損傷
- 入院期間1年6ヶ月
- 後遺障害1級3号
事故の状況
Case4は、被害者が市バスに乗車していた際に、運転手の不注意により急停車した衝撃で、車内床に転倒しパイプに頭部を強くぶつけ、頚椎損傷の傷害を負ってしまった事故です。
ケガの症状
被害者の方は症状固定と診断され、神経系統の機能又は精神に著しい傷害を残し、常に介護を要するものとして後遺障害1級3号の認定を受けました。
日常生活で介助を要する状況となり、頚部以下の感覚が麻痺しており、介助により立った上なら歩行器歩行のみが可能であるが実用的な歩行は不可能、高度の排尿困難もあり今後も合併症による増悪がありうると診断されました。
示談金の総額と詳細
損害賠償額 計 7440万4390円 | |
---|---|
うち治療費 | 420万2326円 |
うち逸失利益 | 4479万7827円 |
うち将来の介護費 | 2807万7990円 |
うち慰謝料 | 3167万円 (傷害分367万円 後遺障害分2800万円) |

判例のポイント
被害者に過失があると認められた場合、過失相殺がなされることがあります。
この事故では、運転手の不注意による急停車により被害者を含む乗客に急激な衝撃を与えました。
市バスの運転手には安全運転の義務がありますが、バスの運行に伴う危険防止のため、やむを得ず制動措置等をとることがあります。
また乗客にも、バスの発進や走行中の揺れに伴う危険から自らを守る努力が求められるべきです。
しかし、被害者の方はバス停が近づいてきたために降車のため席を立ち,その後安全確保のためにつり革や手すりに掴まっていなかったという事実から過失相殺が認められました。
後遺障害1級の慰謝料相場より少なすぎないか比較してみましょう


でも、やっぱり年齢とか状況とか違うしなあ…自分の場合はどうなんだろう…。
後遺障害1級の慰謝料相場
慰謝料は、事故に遭ったことで生じた「精神的苦痛」に対する賠償金であるため、具体的な金額にするのは難しいことです。
ですが、類似ケース同士で金額が大幅に違わないようことで公平性が損なわれないよう、慰謝料の基準額がさだめられています。
後遺障害慰謝料の基準額
後遺障害1級の後遺障害慰謝料の基準:2800万円
先ほどご紹介した判例でも、この基準額をベースに、実際の慰謝料額を決めています。
症状やケースによって慰謝料の額は異なる
同じ級や症状でももらう慰謝料の金額は人によって異なります。
後遺障害1級では、介護を必要とする後遺障害かどうかでも大きく金額が変わります。
あくまでも相場は目安なので、一人ひとりのケースに沿って一つひとつ考えていくことが必要です。
交通事故で弁護士に相談する必要性


弁護士に依頼するメリット
- 精神的負担を軽減することができる
- 複雑な手続きを任せることができる
- 慰謝料や逸失利益を増額できることがある
- 事故のケースごとに適切な対応をしてもらえる
後遺障害1級に認定されるほどの重傷を負ってしまった場合、慰謝料や逸失利益の計算はとても複雑なものになります。
また、ケースによって大きく異なるので自分では判断が難しいことがあります。
保険会社からの提示金額だと、被害者の受け取る適切な補償ではないこともあります。

被害者の方の未来に繋がるよう尽力いたしますので、まずはご相談ください。
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