2021.1.29 更新
どのタイミング?後遺障害の認定と損害賠償金の支払い
交通事故のケガが原因で後遺症が残ってしまったときには、後遺障害の等級認定を受けることによって後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できます。
ただ、申請方法の違いによって、損害賠償金が支払われるタイミングも異なるので注意が必要です。
スムーズに補償を受けるためには、後遺障害の認定条件を把握したうえで、必要な手続きを行うことが重要です。
等級認定を受けるときに押さえておくべきポイントや認定が遅いと感じたときの対処法などについて、詳しく解説していきます。
目次
後遺障害の等級認定手続きと申請するタイミング
申請方法は2つある
交通事故によるケガが完治せずに、後遺症が残ってしまうことがあります。
事故後の生活にも影響を与えるため、適正な補償を受けるためにも後遺障害の等級認定手続きを行うことが肝心です。
申請方法には事前認定と被害者請求の2つがあり、医師から後遺障害診断書を作成してもらった後に手続きを行います。
事前認定は後遺障害診断書を保険会社に提出するだけでよく、後は認定結果を待つだけです。
ただ、書類に不備があったとしてもそのまま手続きが行われてしまうので、実際の症状に見合った等級が認定されるとはかぎりません。
一方、被害者請求の場合はすべての書類を自分でそろえる必要があるものの、入念に準備を行えるので症状に見合った等級が認定される可能性が高くなります。
審査はどちらの場合でも、損害保険料率算出機構が行うことになり、自賠責保険会社が窓口となります。
認定結果に納得できないときには、異議申し立てなどを行うのが基本的な流れです。
等級認定の申請は「症状固定後」となる
症状固定とは、ケガの治療を継続しても症状の改善が見られない状態のことを指します。
治療の途中で保険会社から打ち切りを伝えられることもありますが、あくまでも判断は医師が行うものなので、保険会社から打ち切りのお話が出ても安易に治療を終了してはいけない可能性もあります。
症状固定となることで損害額が確定するので、適正な補償を受けるためには医師とのコミュニケーションが欠かせません。
治療や検査を適切に行ったうえで、症状固定と診断されてから後遺障害の等級認定手続きを進めましょう。
等級認定と損害賠償金の支払いが行われる期間
事前認定のケース
事前認定の場合、後遺障害等級の認定結果が出るまでの期間は、申請を行ってから1~2ヶ月程度です。
また、損害賠償金が支払われるのは示談成立後となるため、すぐに受け取れるわけではありません。
ケガの程度や示談交渉の進捗具合にもよりますが、事故発生から6ヶ月~1年ほどは見込んでおきましょう。
被害者請求と違って申請手続きそのものはシンプルであるため、損害賠償金が一括払いでも問題ない場合には事前認定を選んでみましょう。
被害者請求のケース
被害者請求においても、審査は損害保険料率算出機構が行うので、認定結果が通知されるまでの期間は1~2ヶ月程度です。
一方で、損害賠償金の支払いについては、示談成立前であっても自賠責保険から等級に応じた一時金が受けられます。
損害の種類 | 自賠責保険の限度額 |
---|---|
後遺障害による損害 | 75万円(14級)~3,000万円(1級) |
被害者請求ではすべての書類を自分でそろえる必要がありますが、医師や弁護士といった専門家と連携して進められるならば、スムーズに手続きを進めることも可能です。
支払いのタイミングが早いのは「被害者請求」
すみやかに補償を受けるならば、事前認定よりも被害者請求のほうが適しています。
被害者請求では自賠責保険会社に対して申請手続きを行うので、後遺障害の認定結果が出れば、たとえ相手方との示談が成立していなくても損害賠償金の一部を自賠責保険から受け取れます。
適正な補償を受けるためにも、焦って示談を成立させてしまうのではなく、被害者請求で損害賠償金の一部を受け取ったうえで交渉するほうが良い方もいらっしゃるでしょう。
認定が遅いと感じたときの対処法
後遺障害の認定における審査は、事前認定・被害者請求のどちらにおいても1~2ヶ月程度かかります。
これは、いずれの申請方法でも損害保険料率算出機構が審査を行っているためです。
ただ、書類の送付は保険会社を通じて行うものであるため、申請をしてから1ヶ月以上経っているときには保険会社に問合せてみましょう。
申請時期によっては事務処理に時間がかかっていることもあるので、むやみに催促をしてしまうのではなく、状況の確認程度に留めておくほうが無難です。
また、事前認定での手続きで時間がかかっているのであれば、途中から被害者請求に切り替えることもできます。
手続きの切り替えを行うときには、弁護士に相談してみるとスムーズでしょう。
後遺障害と認められたときに受け取れる損害賠償金
損害賠償金の内訳
交通事故の加害者側に請求できる損害賠償金の項目は、慰謝料や治療費、交通費などさまざまなものがあります。
納得できる補償を受けるためにも、請求可能な項目を把握しておくことが大切です。
損害賠償金の主な内訳を取り上げると、次のようになります。
損害賠償金の種類 | 内容 |
---|---|
慰謝料 | 交通事故による精神的なダメージに対して支払われる補償。入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料の3種類がある。 |
治療費 入院費 |
治療にかかる費用。入院雑費なども含まれる。 |
通院交通費 | 通院のために公共交通機関などを利用したときにかかった交通費 (タクシーの利用は医師の判断による) |
通信費 | 交通事故によってかかった通話代など |
修理費 | 車両の修理にかかった費用 (レッカー代や代車等の費用も含む) |
付添看護費 | 入通院で付添が必要になった際に認められる費用 (家族の付添でも認められる) |
器具等購入費 | 治療や後遺症が残った際にかかる費用 (車椅子・松葉杖など) |
家屋等改造費 | 後遺症が残ることによってかかる自宅のバリアフリー化などの費用 |
物損費用 | 交通事故が原因で破損したものの費用 |
葬儀関係費 | 葬儀に関する費用 |
休業損害 | 休まずに働いていれば得られた現在の収入の減少に対する損害賠償 |
逸失利益 | 交通事故がなければ将来得られたはずの経済的な利益 |
後遺障害慰謝料と逸失利益
後遺障害の等級認定手続きを行わなくても、入通院慰謝料や治療費、交通費などの請求は可能です。
ただ、後遺障害と認定されなければ、後遺障害慰謝料や逸失利益の請求は難しいので注意をしておきましょう。
後遺障害慰謝料とは、交通事故によって国が定めた基準に該当する後遺障害を負ってしまった場合に支払われる慰謝料のことです。
認定される等級によって、慰謝料額が異なるといった特徴があります。
逸失利益は、交通事故にあわなければ得られたはずの将来的な収入に対する補償です。
後遺障害慰謝料とは異なり、事故前の収入や年齢によって金額も違ってきます。
後遺障害の等級によって、労働に対する影響(労働能力喪失率)も異なるので、逸失利益として請求できる金額も変わる点を押さえておきましょう。
専業主婦(主夫)や学生であっても、逸失利益の請求はできます。
等級ごとに金額は異なる
後遺障害に関する補償は、認定された等級によって金額が異なります。
また、自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準(裁判基準)といった計算する基準によっても違ってきます。
たとえば、後遺障害の等級認定で多く見られる14級の慰謝料を比較すると、以下のようになります。
自賠責保険基準 | 32万円 |
---|---|
任意保険基準 | 40万円 |
弁護士基準(裁判基準) | 110万円 |
※自賠責保険基準は2020年4月1日以降のもの。
※任意保険基準は推定。
※弁護士基準(裁判基準)は日弁連交通事故相談センター「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(赤い本)にもとづく。
後遺障害にまつわる補償は、等級が1つ違うだけでも金額が大きく異なってくるので、実際の症状に見合った認定結果を得ることが重要です。
後遺障害の等級ごとの認定基準や具体的な慰謝料額について知りたい場合には、以下の記事も参考にしてみましょう。
等級認定を受けるときに押さえておくべき5つのポイント
後遺障害として等級認定を受けるためには、自動車損害賠償保障法(自賠法)で求められている以下の5つの要件をクリアする必要があります。
■交通事故が原因となる肉体的・精神的な傷害であること
■将来においても、回復は見込めないと医師が判断した状態であること(症状固定後であること)
■交通事故と本人の感じる後遺症状に因果関係が認められること
■本人の感じる後遺症状の原因が医学的に証明、説明できるものであること
■後遺症状の程度が自賠責法施行令の等級に該当すること
交通事故と症状の因果関係が、医学的な見地からもはっきりとしており、症状固定後にも障害が続くことが前提となります。
単に症状が生じているだけではなく、日常生活に今後も支障が出ることが証明されなければなりません。
そのためにも、事故後すぐに医師の診察を受け、レントゲンやMRIなどの精密検査を受けましょう。
仮に交通事故を原因とする後遺症であったとしても、病院に行くのが遅くなってしまえば、因果関係がないと判断されてしまう恐れもあります。
また、主治医と緊密なコミュニケーションをとって、後遺障害診断書に実際の症状を正しく反映してもらうことが重要です。
等級認定の手続きで悩んでしまう前に弁護士に相談をしよう
交通事故の被害にあって後遺症が残るようなケガを負ってしまった場合には、後遺障害の等級認定手続きを行うことが大切です。
後遺障害として認められれば、後遺障害慰謝料や逸失利益が請求できるので、損害賠償金も増える可能性があります。
ただ、後遺障害については専門的な知識も必要となるため、等級認定手続きに時間や手間が多くかかってしまう面もあるのです。
自分1人で手続きを行うことに不安を感じるときには、弁護士に相談をしてみるのも1つの方法だといえます。
交通事故事案に詳しい弁護士に相談をすれば、後遺障害の等級認定手続きだけでなく、保険会社とのやりとりや示談交渉などをすべて任せられます。
認定結果に納得ができないときに行う異議申し立ても、弁護士を通したほうがスムーズです。
また、弁護士に依頼をすることで弁護士基準(裁判基準)での損害賠償請求が可能となるので適正な補償を受けられます。
まとめ
後遺症が残ってしまうほどのケガをしたときには、事故後の生活を1日も早く立て直すためにも、適正な補償を受けることが重要です。
後遺障害として認定されることによって、交通事故によって生じたさまざまな損害を加害者側に請求できます。
ただ、後遺障害の等級認定手続きは専門的な知識が必要であり、被害者が1人で行うのは負担も大きいものです。
弁護士に相談をすることで、後遺障害の等級手続きだけでなく、示談交渉などもサポートしてもらえます。
適正な補償を受けるためにも、1人で悩まずに早めに弁護士に相談しましょう。
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