2020.12.14 更新
交通事故の被害者のための保険フル活用法!保険会社への対処法も紹介
「交通事故の被害者はどんな保険が使えるの?」
「こんな時だから保険を使いたいけど、どうやって使うの?」
交通事故の被害者となってしまったときは、さまざまな「保険」を利用することで事故による損害を補償します。
ただし、加害者側は自分の加入している保険会社に任せますが、被害者としては「どの保険が利用できるか」「どのように対応すればよいか?」わからないものです。
たとえ加害者が無保険であっても救済される仕組みがあるので、保険について正しく理解をしておきましょう。
交通事故の被害による損失を最小限に食い止めるためにも、保険をフル活用することが大切です。
この記事では利用できる保険の種類やポイント、保険会社への対処法などについて解説していきます。
目次
交通事故の被害者になってしまった……利用できる保険の種類は?
そもそも交通事故の被害者が利用できる保険は、どのようなものがあるのでしょうか?
治療費の支払いは基本的に、加害者が入っている自賠責保険や自動車保険(任意保険)から受けることになります。
しかし、事故の状況によっては自分の過失割合も高く、充分な補償が受けられない場合もあるため、健康保険の利用も考えておく必要があります。
また、勤務中や通勤中に事故にあってしまったときには、労災保険によって補償が受けられます。
加害者が無保険の場合であっても、加入している任意保険から補償を受けられるので、利用できる保険の種類を把握しておきましょう。
加害者が入っている任意保険や自賠責保険修理費
交通事故被害者の治療費や修理費、慰謝料などの損害賠償は、加害者側の保険会社が支払うのが基本となります。
加害者が加入している保険には
・自賠責保険
・任意保険(自動車保険)
の2種類あります。
自賠責保険
自賠責保険は、車を所有すると必ず加入しなければならないと法律で決まっている保険です。そのため強制保険ともいいます。
それだけに交通事故の被害者に対する補償も最低限となっています。
被害者救済を目的とし、ケガの治療費や精神的ダメージへの慰謝料など対人のみ補償され、自動車の修理代などの物損については補償されません。
受けられる補償内容としては、治療費・看護料・通院交通費・休業損害・文書費・入通院慰謝料などで、支払限度額は120万円までです。
ただし後遺症が残り、後遺障害等級認定がなされると慰謝料は等級によって、32~1,600万円までの補償が受けられ、死亡時には死亡慰謝料・逸失利益(将来得られるはずだった収入)・葬儀費用などが補償されます。
自賠責保険での慰謝料計算方法は、以下の記事で詳しく解説しています。
任意保険(自動車保険)
一方で、任意保険は車の所有者が“加入してもしなくてもよい”保険です。
自賠責保険が「人身のみ」に対して、加害者が任意保険に加入していれば「物損」など自賠責保険がカバーできない補償が受けられます。
また自賠責保険を超える損害賠償が発生した場合、超過分は任意保険会社が支払ってくれます。
それから自賠責保険と一線を画すのが「示談代行サービス」です。
本人の代わりに保険会社が示談交渉を行ってくれ、加害者としてはメリットの大きいサービスです。
しかし、被害者にとっては加害者側の保険会社が交渉窓口になることで、
・治療費の打ち切りを宣告
・過失割合でもめる
などトラブルにつながる恐れもあります。
加害者側の保険会社は示談交渉を専門的に扱っている、いわばプロです。
やりとりに困ったら、弁護士に依頼するなどの対策も必要になります。
両者の違いをまとめると以下の通りです。
自賠責保険 | 任意保険 |
---|---|
・車を購入する時に強制的に加入 ・ケガなど対人のみ補償 ・補償金に上限が定められている ・示談交渉は加害者本人が行う |
・加入は自由 ・人身だけでなく物損も補償される ・自賠責保険の上限超過分をカバー ・保険会社と示談交渉する可能性がある |
加害者が任意保険に加入しているかどうかで、被害者の対応も変わってきます。事故にあった早めの段階で「任意保険会社に加入しているか?」確認しておきましょう。
被害者が入っている任意保険や公的保険の利用
交通事故の過失が、被害者側にもあるときには治療費のすべてをカバーできません。そのため、自分が加入している任意保険を利用する場合もあります。
事故にあったときには、すぐに加入している保険会社に連絡をして確認しましょう。
同時に、損害賠償請求などに備えて弁護士費用特約の有無についても尋ねておく必要があります。
弁護士費用特約を利用できれば、弁護士への支払いを気にすることなく相談できるため便利です。
健康保険や労災保険
交通事故によるケガは、基本的には加害者もしくは加害者が加入している保険会社が支払います。
ただ一時的に被害者が立て替えるケースもあります。そんな時に活用したいので健康保険です。
自己負担を1〜3割に抑えられるほか、治療費の負担が高額になってしまった場合は高額療養費制度も活用できるなど被害者にとってメリットはたくさんあります。
交通事故で健康保険を利用するメリットや注意点は、以下の記事で詳しく紹介しています。
また、通勤中も含めて仕事中に交通事故にあった場合は「労災保険」を利用しましょう。
労災保険であれば、治療費が全額支給されるほか、休業特別受給金なども支給されるため、さらに手厚い補償が受けられます。
加害者が無保険でも救済される!
加害者が任意保険に入っていないときには、被害者が加入している任意保険でカバーできます。
大きく分けて、人身傷害補償保険・搭乗者傷害保険・無保険車傷害保険の3種類があり、それぞれのポイントをまとめると以下のようになります。
保険の種類 | 特徴 |
---|---|
人身傷害補償保険 | ・車に乗っていて交通事故被害にあったときに、保険金の支払いが受けられる。 ・事故の過失割合は基本的に関係がない。 ・重大な過失(酒気帯び運転など)が被保険者にある場合や自然災害のときには支払われないケースもある。 |
搭乗者傷害保険 | ・車に乗っている全員を対象者として、保険金が支払われる。 ・過失割合の影響で、保険金が減額されることはない。 |
無保険車傷害保険 | ・被害者が死亡もしくは後遺障害を負ったときのみ補償される。 ・完治したケガについては補償されない。 |
また、自賠責保険または自賠責共済から保険金の支払いを受けられない被害者を助けるための制度として、自動車損害賠償補償事業(政府保障事業)があります。
この制度は、ひき逃げ事故や盗難車による事故の被害者となってしまったときに補償される仕組みです。
治療費や修理費はいくら受け取れる?請求できる損害賠償とは
交通事故の被害者になるとかかってしまう実費一覧
交通事故の被害にあってしまうと、治療費や車の修理代などさまざまな費用がかかります。
受けた損害については後から加害者側に請求できますが、いったん費用を立て替えなければならないケースもあるので、おおまかな費用の目安を把握しておくことが大切です。
費用の種類 | 請求できる金額の目安 | ポイント |
---|---|---|
治療費 | 原則として、実費負担分。過剰診療や差額ベッド代などは認められない。 | ・治療費には診察料・入院費・検査料・投薬代・手術費などが含まれる。 ・ケガの完治もしくは症状固定までに支払われたもののうち、必要性の認められる範囲内での金額が請求できる。 |
付添看護費 | 原則として、実費負担分。家族などが付添人となった場合には、入院付添で1日あたり5,500~7,000円、通院付添で1日あたり3,000~4,000円が目安となる。 | ・ケガの程度や被害者の年齢などによって考慮される。 ・重い後遺症が残ったときには、将来分の付添看護費が認められることもある。 |
入院雑費 | 入院1日あたり、1,100~1,500円を目安として算定される。 | ・治療費以外の入院中の雑費。 ・日常雑貨品費(洗面具・ティッシュペーパー・文房具・食器などの購入費)、栄養補給費(お茶や茶菓子などの購入費)、通信費(電話・電報・郵便代など)、文化費(新聞・雑誌代など)、家族の通院交通費 |
交通費 | 実費分 | ・入通院や転院のために、被害者本人が必要とした交通費。 ・バスや電車などの公共交通機関を利用したときには、その実費分。 ・自家用車の利用ではガソリン代・駐車場代・高速道路利用料金などが認められる。自賠責基準においては1kmあたり15円が一般的。 |
装具購入費 | 実費分 | ・義足・義手・義眼・車椅子・補聴器・入れ歯・かつら・眼鏡・コンタクトレンズなど。 ・装具が将来にわたっても必要な場合には、買い替え費用も認められる。 |
車の修理代 | 実費分 | 修理代の見積書が必要。 |
葬儀費 | 60~170万円程度 | ・葬儀費用だけでなく、墓碑の建設費用や仏壇の購入費用なども最高裁によって認められている。 ・自賠責基準で60万円、弁護士基準で130~170万円程度。 |
加害者側に費用を請求するためには、領収書や見積書をきちんと残しておくことが必要です。
バスの利用などで領収書がない場合でも、かかった金額や日付をメモに残しておきましょう。
慰謝料の発生条件と気をつけるべきポイント
交通事故における慰謝料とは、精神的な苦痛に対する損害賠償のことを指します。
慰謝料は被害者が精神的な苦痛を受けていることが前提となるため、物損事故においては慰謝料が発生しません。
慰謝料は大きく分けて、入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料の3つに分けられます。
さらに、慰謝料を計算する基準としては自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準の3つがあり、どの基準を採用するかで慰謝料の金額は変わってきます。
入通院慰謝料を例とすれば、通院1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月の場合ではそれぞれ以下の金額が請求できます。(※通院頻度は3日に1度、他覚症状なしとして計算)
自賠責保険基準 | 任意保険基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|---|
1ヶ月 | 8万4,000円 | 12万6,000円 | 19万円 |
3ヶ月 | 25万2,000円 | 37万8,000円 | 53万円 |
6ヶ月 | 50万4,000円 | 64万3,000円 | 89万円 |
※上記はあくまで目安です。
慰謝料の詳しい計算方法については、以下の記事で詳しく紹介しています。
任意保険基準では保険会社によって基準は異なるものの、自賠責基準と同等か少し上回る程度の補償となっています。
そして、弁護士基準は他の基準と比べて最も高くなります。
また、加害者が自賠責保険と任意保険の両方に加入しているときには、被害者は加害者の任意保険から補償を受け取ります。
一方で、加害者が任意保険に加入しておらず自賠責保険だけの場合には、加害者の自賠責保険から補償を受けられます。
自賠責保険で補償してもらえるのは120万円が限度となっており、物損事故については補償されません。
請求するための手続きも複雑であるため、困ったときには弁護士に相談をしてみましょう。
慰謝料以外にも受け取れる?損賠賠償の種類
交通事故による損害賠償では、慰謝料の他にも逸失利益や休業補償など、さまざまなものを加害者側に請求できる可能性があります。
損害賠償の種類は多岐にわたるので、交通事故の示談に詳しい弁護士に相談をして、どのようなものが請求できるのかを洗い出してみましょう。
弁護士に相談をすれば、慰謝料の請求も弁護士基準が適用されるので、納得できる金額を得られるはずです。
保険会社とのやりとりに困ったり、損害賠償について気になったりしたときには、被害者の心強い味方になってくれる弁護士に相談してみてください。
交通事故の被害者が保険会社に賠償を請求する2つの方法
交通事故の被害者が加害者側の保険会社に損害を賠償してもらう方法として、被害者請求と事前認定の2つがあります。
それぞれの基本的な仕組みを理解したうえで、正しい手順で手続きを行いましょう。
被害者請求は加害者の保険会社に直接請求する方法
被害者請求とは、被害者自ら損害賠償の請求を行う仕組みです。
自動車損害賠償保障法第16条によって認められているものであり、以下の条文にもとづいています。
第16条 第3条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、保険金額の限度において、損害賠償額の支払をなすべきことを請求することができる。
被害者請求を行う手順は、相手方の保険会社から書類を取り寄せ、必要事項を記入したうえで提出して、自賠責損害調査に事務所による審査を受けます。
申請内容が認められれば、保険金が支払われることになりますが、準備すべき書類も多いので漏れがないように早めに取り組みましょう。
必要書類としては、自賠責保険金等支払請求書・交通事故証明書・事故発生状況報告書・診断書・通院交通費明細書・休業損害証明書・印鑑証明書などがあります。
被害者請求の手続き方法については、以下の記事で詳しく紹介しています。
事前認定は加害者側の保険会社に手続きを任せる方法
事前認定とは、加害者が加入をしている保険会社に手続きを任せる仕組みです。
医師から受け取った後遺障害診断書を保険会社に提出するだけなので、被害者自身の負担を軽減できるのが特徴です。
一方で、たとえ書類に不備があったとしてもそのまま手続きを進められてしまい、結果として実際よりも低い等級認定を受けてしまう可能性があります。
また、事前認定で申請を行った場合には、示談金の支払いが示談成立となってから一括で支払われる点にも注意が必要です。
被害者請求のほうが納得できる結果が得られやすい
加害者側の保険会社は、基本的に味方になってくれるわけではありません。
そのためお互いの認識が一致しないときには事前認定による手続きを行うのは避けたほうがいいでしょう。
たとえば、むちうちで他覚症状がないケースでは後遺障害認定を受けるのが難しく、加害者側の保険会社から後遺障害ではないと判断される可能性もあります。
また、重い後遺障害が残ってしまう場合には認定される等級が1つ違うだけで、実際に受け取れる損害賠償金が大幅に減ってしまいます。
そのため、納得できる結果を得るためには、被害者請求を選択するほうが良いと言えます。
ただ、多くの書類を準備したり、内容を確認したりする作業が大変でもあるので、1人で悩む前に弁護士に相談してみましょう。
保険会社と示談交渉を進める上でのポイント
加害者側との保険会社とのやりとりは、示談書にサインをするまで続きます。
交通事故示談に不慣れな被害者に対して、保険会社の示談担当者は専門家といえるでしょう。
もちろん、誠実に対応してくれる保険会社もありますが、示談は交渉ごとですので、トラブルになりやすいのも事実。あらかじめ対策をしておくに越したことはないでしょう。
ここからは保険会社への対処方法について紹介していきます。
「支払う保険金は抑えたい」が保険会社のホンネ
保険会社の本音としては、「できるだけ被害者に支払う保険金(示談金)は低く抑えたい」という点があるでしょう。
そのため、治療費や休業補償の打ち切りを伝えてきたり、症状固定を促すアプローチを受けたりする場合もあります。
ただ、むやみに感情的になってしまわずに、落ち着いて対処していくことを心がけましょう。
担当医師には、治療の継続が必要であることを診断書の形で示してもらい、保険会社と粘り強く交渉していくことが大切です。
打ち切りを告げられても妥協しないことが大切
仮に、保険会社から治療費の支払いを打ち切られたとしても、治療を継続することが重要です。
健康保険などを使っていったん治療費を立て替えたとしても、後からまとめて加害者側に請求できるので心配いりません。
治療を途中で止めてしまえば、ケガの回復に影響が出てしまうだけでなく、その後の後遺障害認定や損害賠償請求にも影響が出てしまいます。
「治療期間が短い=ケガの程度が軽い」と判断されてしまうこともあるので気をつけておきましょう。
ただ、保険会社とのやりとりでは安易に妥協をしてはいけないものの、自分だけで対処するのは難しい場合もあります。
保険会社とのやりとりに困ったときには、弁護士に相談をするのも1つの方法だと言えます。
弁護士に相談して不安をなくそう!慰謝料が増額となる可能性も
示談交渉は加害者側の保険会社とのやりとりとなるため、自分1人で手続きを進めるのは何かと不安が生じてしまうものです。
交通事故事案に詳しい弁護士のサポートを受ければ、難しい手続きを任せられるため、1人で取り組む場合よりも安心できます。
また、慰謝料の請求には弁護士基準が適用されるので、1人で進めるときよりも慰謝料が高額になる可能性もあるのです。
加入している任意保険に弁護士費用特約が付いていれば、弁護士報酬の支払いを気にすることなく相談できます。
被害者請求や後遺障害認定の申請手続きなどは専門的な知識も必要になるため、納得できる補償を受けるためにも弁護士の力を借りてみましょう。
まとめ
交通事故の被害者となってしまったときには、活用できる保険をしっかりと使っていくのが大切です。
それぞれの保険の仕組みを把握したうえで、必要に応じて使い分けてみましょう。
また、加害者側の保険会社とのやりとりで揉めてしまうときには、被害者請求を考えてみるのも1つの方法です。
納得できる結果を得やすくなり、請求できる損害賠償金も増える可能性があります。
手続きには専門的な面もあるため、早い段階で弁護士に相談をしてみましょう。
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