2020.5.18 更新

家族が交通事故にあってしまったら…被害者家族は慰謝料を請求できる?

「親が交通事故にあい、介護が必要になりました。この場合、私も慰謝料を請求できますか?」

交通事故によってつらい思いをするのは、被害者本人だけではありません。

被害者本人が死亡したり、重度の後遺障害と認定された場合には、その家族も大きな心の傷を負います。

そのため交通事故により大きな精神的ショックを受けた場合には、その家族も慰謝料を請求できます

納得できる慰謝料を請求するためにも、死亡慰謝料や後遺障害慰謝料の仕組みについて、正しく把握しておきましょう。

この記事では、交通事故の被害者家族が慰謝料を請求するときのポイントと、気をつけるべき点について解説していきます。

家族が慰謝料を請求できる3つのケースとできないケース

交通事故の被害にあった場合、慰謝料を請求できるのは被害者本人だけではありません。

事故によって重度の精神的な苦痛を受けたときには、家族も加害者側に慰謝料の請求ができます。

慰謝料の請求ができるケースとできないケースのそれぞれについて、解説していきます。

慰謝料を請求できるケース

被害者の家族が慰謝料を請求できるのは、
・被害者本人が死亡したとき
・重度の後遺障害と認定されたとき
・同乗していてケガを負ったとき
3つです。

3つのケースについて表にまとめると、以下のようになります。

ケース ポイント
被害者本人が
死亡したケース
・民法の規定によって、遺族が慰謝料を請求できる
・被害者の父母や配偶者、子どもだけでなく内縁の配偶者や兄弟姉妹も遺族固有の慰謝料を請求できる
重度の後遺障害と
認定されたケース
・被害者本人に代わって、慰謝料を請求できる
・重度の後遺障害とは、高次脳機能障害や遷延性意識障害(植物状態)など
同乗していて
ケガを負ったケース
・運転者と事故相手に対して、慰謝料を請求できる
・運転者に過失がなかったり、対人賠償責任保険に加入していたりするときには、事故相手のみに請求を行う

慰謝料を請求できないケース

被害者が死亡したり、重傷を負ったケースであれば、その家族も慰謝料請求は可能です。しかし裏を返せば、重篤なケース以外では慰謝料は発生しないとも言えます。

交通事故の被害者本人が生きていて、後遺症が残らなかったり軽度であったりする場合には、家族が被害者本人に代わって慰謝料を請求することはできません。

ただし、たとえば子どもが事故でケガをして、一人で通院できないときには「通院付添費」として請求は可能です。

被害者が死亡したときに家族が請求できる慰謝料

被害者が死亡した場合、残された家族は加害者に対して死亡慰謝料を請求できます。
ちなみに死亡慰謝料は原則として相続税の対象とはなりません。

では、死亡慰謝料はどれほど支払われるのでしょうか?
ここでは家族に支払われる死亡慰謝料の仕組みと金額についてお話ししていきます。

死亡慰謝料は2種類

交通事故によって家族が死亡した場合、請求できる慰謝料は2種類あり、その合計が家族に支払われます。

被害者本人への慰謝料
死亡した場合であっても精神的ダメージは存在するとみなされ、被害者本人の慰謝料請求権が認められています。

とはいえ、被害者本人は請求できませんので、相続人である遺族が請求します。

遺族への慰謝料
死亡事故の場合は被害者本人だけでなく、残された家族も大きな精神的ダメージを負うため、本人への慰謝料とは別に慰謝料請求権が認められています

遺族への慰謝料が請求できるのは、
・被害者の父母(養父母含む)
・配偶者
・子ども
ですが、内縁関係の妻(夫)や養子、胎児、認知した子どもにも慰謝料請求権が認められています。

死亡慰謝料の計算方法

死亡事故を含む慰謝料の算定基準には
・自賠責保険基準
・任意保険基準
・弁護士基準
の3つがあり、それぞれ計算方法が異なります。

自賠責保険基準での慰謝料

交通事故の被害者に対して最低限の補償を目的としており、もっとも低い基準額になります。

自賠責保険基準での慰謝料は、「損害賠償額算定基準2020(令和元)年版 ※通称:『赤い本』」で以下のように記されています。

被害者本人への慰謝料
400万円
遺族への慰謝料
遺族が一人の場合 550万円
遺族が二人の場合 650万円
遺族が三人以上の場合 750万円

※さらに被害者に被扶養者がいる(死亡した被害者の収入で生計を立てている)場合は、上記の金額に200万円が追加されます。

たとえば、父親・母親・子どもの3人家族(生計を父親の収入で立てている)で、父親が交通事故によって死亡した場合、残された母親と子どもが受け取れる死亡慰謝料は以下のようになります。
400万円+650万円+200万円=1,250万円

任意保険基準での死亡慰謝料
保険会社が独自で設定している基準で、金額は会社によって異なります。

任意保険基準は自賠責保険基準とは異なり、「被害者本人」と「遺族」の合算とされています。

また死亡事故においては被害者の属性(家庭内でどのような立場なのか)によって異なり、慰謝料額の推定相場としては以下のとおりです。

被害者の属性 慰謝料額
一家の支柱(家庭の生計を支えている) およそ1,500万円〜2,000万円
配偶者・専業主婦(主夫) およそ1,300万円〜1,600万円
子ども・高齢者・その他 およそ1,100万円〜1,500万円

弁護士(裁判)基準での死亡慰謝料
弁護士会が過去の裁判例をもとに発表している基準で、主に弁護士に依頼したときや裁判になったときに採用されています。3つの基準の中では最も高額に設定されています

弁護士基準も任意保険基準と同様に算出されます。

被害者の属性 慰謝料額
一家の支柱(家庭の生計を支えている) 2,800万円
配偶者・専業主婦(主夫) 2,500万円
子ども・高齢者・その他 2,000〜2,500万円

被害者が後遺障害を負ったときに家族が請求できる慰謝料

後遺障害とは、ケガが完治せずに後遺症が残り、後遺障害認定を受けたものを指します。

被害者本人が死亡していなくても、重い後遺障害が残ったケースであれば、家族にも別途慰謝料が支払われる可能性があります。

重い後遺障害とは、
・被害者本人の意識が戻らない
・重度の高次脳機能障害
・手足が動かせないほどの麻痺状態
で、後遺障害等級認定でいえば、1〜2級の等級認定を受けたとき、本人とは別に家族にも慰謝料が発生するケースが多く見られます
※3級以下でも家族への慰謝料が認められたケースもあります。

後遺障害の家族の慰謝料については、死亡慰謝料のような基準は設けられてはいません。しかし過去の判例をみると、家族一人につき、本人への後遺障害慰謝料の1〜2割が目安となっています。

【判例1】脳挫傷で後遺障害1級に認定された主婦のケース
寝たきりの状態になり家族による介護が必要とされたため
・本人への慰謝料:2,800万円
・家族への慰謝料:夫に400万円、長女とその夫:各200万円
合計3,600万円の後遺障害慰謝料が認められた。
(平成15年2月、長野地裁)

【判例2】高次脳機能障害、下肢短縮で後遺障害併合2級に認定された男性のケース
精神状況が大きく変化した夫を将来にわたって看護する必要性や、子ども2人気も強いショックを受けたと推認され
・本人への慰謝料:2,370万円
・家族への慰謝料:妻に200万円、子ども:それぞれ100万円
合計2,770万円の後遺障害慰謝料が認められた。
(平成20年1月、東京地裁)

【判例3】高次脳機能障害で併合4級に認定された男児のケース
長年にわたって後遺障害を抱えること、また両親は事故直後から本人の十有徳な状態に悩まされてきたことなどから
・本人への慰謝料:1,670万円
・家族への慰謝料:両親:それぞれ50万円
合計1,770万円の後遺障害慰謝料が認められた。
(平成25年7月、さいたま地裁)

家族への慰謝料金額は、後遺障害の等級や今後必要になる介護状況によって判断されます。

とはいえ、上記は裁判の判決によって家族への慰謝料が認められた例です。

もしかしたら、介護が必要なのに、加害者の保険会社から提示された慰謝料に家族への慰謝料が記載されていなければ、弁護士など専門家に相談してみるとよいでしょう。

家族が運転する車に同乗していたときの慰謝料

家族が運転する車に乗って交通事故にあってしまったときには、法的には運転者と加害者の両方に損害賠償ができます。

ただしあえて家族に請求をする必要はないので、実際には事故の加害者に賠償を求めることになります。

また、運転者に過失がない場合であれば、最初から加害者に対してしか損害賠償請求はできません。

過失割合がゼロとなるケースとしては、事故の相手方が一方的に追突してきたときや、相手方が赤信号で突っ込んできたときなど、いわゆる「もらい事故」があげられます。

慰謝料の計算方法については、運転者が事故にあった場合と同じ水準となる点も押さえておきましょう。

事故状況によっては、搭乗者傷害保険や人身傷害補償保険から保険金を受け取れることもあります。

任意保険に加入しているときには、事故後の早い段階で保険会社に連絡をして、どのような補償が受けられるのかを確認しておきましょう。

慰謝料の請求で悩むときには弁護士に相談しよう

家族が交通事故によって死亡したり、重度の後遺障害を負った場合には、本人以外では立証が難しいケースもあります。

また後遺障害の認定を受けるには手続きも必要となりますので、家族の負担も大きくなります。

交通事故との因果関係を示すためには、専門的な知識の他にも事故状況の把握が難しく、家族では対応が難しい場合もあるのです。

したがって、慰謝料の請求で悩んでしまったときには、交通事故事案に詳しい弁護士に相談するのも1つの方法だと言えます。

弁護士に依頼をすることで、
・示談交渉や手続きなどの手間がなくなる
・適切な損害賠償額を請求できる
・弁護士基準(裁判基準)が適用されるため、慰謝料が増額する可能性がある
など、メリットも多くあり、時間的・心理的な負担を軽減できます。

相談であれば無料で対応してくれる法律事務所もありますので、弁護士のサポートを受けてみることを検討してみましょう。

まとめ

交通事故によって家族が死亡したり、重度の後遺障害と認定されたりした場合には、被害者本人に代わって慰謝料が請求できます。

慰謝料の算定基準や金額の目安を把握して、納得できる形で請求することが大切です。

ただ、被害者本人でないケースでの慰謝料請求では、立証が難しい面もあります。

また、死亡事故や重度の障害が残るような事故では損害賠償金も大きくなるため、加害者側の保険会社との交渉も難航してしまいがちです。

慰謝料の請求に悩んでしまったときには、交通事故事案に詳しい弁護士に相談をして、早期に解決していくことが重要です。

納得できる慰謝料が支払われ、1日も早く安心できるように、弁護士に依頼をしてみましょう。

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