2020.6.1 更新

高齢者が交通事故に…慰謝料や休業損害・逸失利益はどうなる?

交通事故の被害にあい、ケガを負うと被害者は加害者に慰謝料を請求できます。

もしかすると、
「高齢者が交通事故の被害にあっても、仕事はしていないから慰謝料が安くなってしまうのでは?」
と不安を感じている高齢者の方がおられるかもしれません。
原則として交通事故の慰謝料は、治療にかかった期間や病院を訪れた回数によって決まります。

そのため、高齢者だからといって慰謝料が低くなることはありません。

ただし、逸失利益や休業損害は若い人と比べて、金額が低くなる可能性があります。

この記事では、高齢者が交通事故のあったときの慰謝料や逸失利益・休業損害などの補償についてお話ししていきます。

高齢者も金額は変わらない!慰謝料を考えるときの基本的なポイント

交通事故の被害においては、高齢者だからといって慰謝料が変わるわけではありません。

なぜなら、慰謝料とは事故による精神的なダメージに対する補償で、年齢によって変動するものではないからです。

交通事故における慰謝料は、原則として症状の程度や治療期間(通院回数)などによって決まります。

事故にあったらすぐに医師の診察を受け、完治もしくは症状固定(治療を継続しても症状が改善しない状態)となってから、加害者側に慰謝料を請求しましょう。

高齢者が交通事故でケガをしたときの慰謝料

交通事故の慰謝料は「誰が計算をするのか?」によって、3つの基準が存在しています。

自賠責保険基準
国が法律で制定した交通事故被害者に対する最低限の慰謝料基準。
自賠責保険会社が自動車の保有者が加入を強制されている保険。
交通事故の被害者に対して最低限の補償を目的としており、もっとも低い基準額になります。

任意保険基準
保険会社が独自で設定している基準です。
会社によって多少異なりますが、入通院慰謝料よりはやや高く設定されています。

弁護士基準(裁判基準)
弁護士会が過去の裁判例をもとに発表している基準。
主に弁護士に依頼したときや裁判になったときに採用され、3つの基準のうち、もっとも高い金額が示されています。

では、3つの基準が慰謝料にどう影響するのか。
・入院や通院にかかる慰謝料(入通院慰謝料)
・後遺障害が残ったときの慰謝料(後遺障害慰謝料)
・死亡したときの慰謝料(死亡慰謝料)
それそれのケースで見ていきましょう。

入通院慰謝料

交通事故によるケガで入院や通院したときに請求できる慰謝料です。

自損事故ではない人身事故であれば請求でき、治療にかかる期間や回数によって金額がそれぞれ定められています。

例として、1・3・6ヶ月間(月に10回通院)治療を続けたときの慰謝料は以下のようになります。

通院期間 自賠責保険基準 任意保険基準 弁護士基準(裁判基準)
1ヶ月 8.6万円 12.6万円 28万円
3ヶ月 25.8万円 37.8万円 73万円
6ヶ月 51.6万円 64.3万円 116万円

※自賠責保険基準は、1日あたり4,300円として計算(2020年3月31日以前こ交通事故の場合は1日あたり4,200円)
※任意保険基準は推定です
※弁護士基準は日弁連交通事故相談センター東京支部発行の「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」参照

高齢者のケースでは、ケガの回復が長引く傾向にあります。そのため、若年層と比べると慰謝料が高額になりやすいといえるでしょう。

後遺障害慰謝料

交通事故が原因で、労働能力の低下や喪失など後遺症が残った場合、入通院慰謝料とは別に後遺障害慰謝料を請求できます。

ただし、損害保険料率算出機構(自賠責損害調査事務所)に書類申請をして、後遺障害と認められる必要があります。

後遺障害と認められると、第1級~第14級までの等級が認定され、等級に応じた後遺障害慰謝料を請求できます。

3つの基準ごとの慰謝料は以下のとおりです。

◾後遺障害等級ごとの慰謝料の目安(かっこ内は「介護を要する後遺障害」)

等級 自賠責保険基準 任意保険基準 弁護士基準
第14級 32万円 40万円 110万円
第13級 57万円 60万円 180万円
第12級 94万円 100万円 290万円
第11級 136万円 150万円 420万円
第10級 190万円 200万円 550万円
第9級 249万円 300万円 690万円
第8級 331万円 400万円 830万円
第7級 419万円 500万円 1,000万円
第6級 512万円 600万円 1,180万円
第5級 618万円 750万円 1,400万円
第4級 737万円 900万円 1,670万円
第3級 861万円 1,100万円 1,990万円
第2級 998万円(1,203万円) 1,300万円 2,370万円
第1級 1,150万円(1,650万円) 1,600万円 2,800万円

※参考:自賠責保険基準と弁護士基準は、日弁連交通事故相談センター 東京支部「損害賠償額算定基準(2020年版)(通称・赤い本)」
※任意保険基準は保険会社ごとに異なるので、あくまで推定です。
※身体の他部位に後遺症が見られた場合などは、さらに慰謝料額が高くなる可能性もあります。

死亡慰謝料

被害者本人が死亡してしまった場合、慰謝料の請求は遺族が行います。

自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士(裁判)基準、それぞれ計算方法が全く異なるため、それぞれお話しします。

自賠責保険基準
「被害者本人の慰謝料」と「遺族の慰謝料」の2つを足したものになります。

【被害者本人の慰謝料】

一律 400万円

【遺族の慰謝料】

請求権者数(慰謝料を請求する遺族の数) 慰謝料額
一人 550万円
二人 650万円
三人 750万円

※さらに被害者に被扶養者がいる場合は、上記の金額に200万円が追加されます
※被扶養者とは被保険者(この場合「被害者」)の収入で生計を立てている一定の範囲の扶養家族のこと
※出典元:「損害賠償額算定基準2020年版(通称:『赤い本』)」より

任意保険基準
慰謝料の金額は被害者の属性(家庭内でどのような立場なのか)によって異なり、慰謝料額の推定相場としては以下のとおりです。

被害者の属性 慰謝料
一家の支柱(家庭の生計を支えている) およそ1,500万円〜2,000万円
配偶者・専業主婦(主夫) およそ1,300万円〜1,600万円
子ども・高齢者・その他 およそ1,100万円〜1,500万円

弁護士基準
任意保険基準同様に被害者の属性によって異なり、基準としては以下のように設定されています。

被害者の属性 慰謝料
一家の支柱 2,800万円
母親・配偶者 2,500万円
子ども・高齢者・その他 2,000~2,500万円

任意保険基準・弁護士基準については「家族内における被害者の属性」によって、死亡慰謝料が算出されます。

そのため、死亡した被害者本人が、すでに定年退職で収入を得ていないケースでは、家族の家計を支えている人と比べると、高齢者の慰謝料は低くなる可能性があります。

逸失利益や休業損害は高齢者の場合では少なくなる可能性も

交通事故の損害賠償では、慰謝料の他にも逸失利益や休業損害なども請求できます。

・逸失利益
将来得られるはずだった収入に対する損害賠償

・休業損害
ケガの治療のために仕事を休む、もしくはケガの影響で仕事ができなかったことに対する損害賠償

また、休業損害も被害者本人が労働によって収入を得ていることが請求できる条件になります。

高齢の方でも、パートやアルバイトなどで収入を得ているのであれば、請求は可能ですが、すでに定年退職で一切就労による所得がない場合は、原則請求できません。

ただし、無職であっても、専業主婦(主夫)であれば家事従事者として休業損害を請求できます。

逸失利益と休業損害について、それぞれの具体的な計算方法について見ていきましょう。

高齢者の逸失利益

逸失利益には、「後遺障害逸失利益」と「死亡逸失利益」があり、計算方法がそれぞれ異なります。

後遺障害逸失利益=基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
死亡逸失利益=基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

高齢ですでに年金のみで生活をしていた場合、「基礎収入がない」とみなされる可能性もあります。

ただし、家事従事者については基礎収入と認められているため、家庭内で何らかの家事を行なっていたことを証明すれば、認定される可能性があります。

また、事故の時点で再就職の内定を受けていたなど、就労による収入が見込まれていたケースであれば、基礎収入が認められる可能性もあります。

さらに、年金受給者が事故により死亡してしまった場合、事故により受け取れるはずであった年金が受け取れなくなったとして、基礎収入と認定されます。

労働能力喪失率については就労できる終期が67歳までと考えられているので、67歳までの年数と平均余命の2分の1のどちらか長いほうをあてはめます。

死亡逸失利益では被害者が年金受給者であった場合、平均余命期間×年金額の賠償請求が可能です。

高齢者の休業損害

休業損害は、ケガが完治もしくは症状固定となるまでの休業日数に応じて請求でき、以下のような計算式となります。

休業損害=事故以前の基礎収入額(日額)×事故発生から症状固定までの休業日数-休業中に支払われた賃金

高齢者の場合では無職や年金を受給している状態だと、休業損害は基本的に認められません。

しかし、逸失利益同様に、被害者本人が家事労働を行っていれば家事従事者として、休業損害が認められるケースもあります。

加重障害と過失割合についても押さえておこう

高齢者だと事故にあう前から、既往歴や治療歴があることもめずらしくありません。

自賠責保険では、すでに抱えている障害(加重障害)を控除して計算する点を押さえておきましょう。

また、高齢者の場合は徒歩や自転車などでの移動も多いので、過失割合(事故当事者の責任割合)が低くなる傾向にあります。

これは、若い人よりも高齢者のほうが危険回避能力が低いためであり、保護に対する必要性が高いためです。

周りのサポートも借りて納得できる損害賠償を

高齢者が交通事故にあうと死亡率が高く、損害賠償額も高くなりがちなので示談交渉が長引く可能性があります。

また、高齢であるとケガの治りも時間がかかり、保険会社が治療費の打ち切りなど強気の態度で出てくるケースもあるのです。

治療期間は損害賠償額にも影響を与えるので、粘り強く対応していく必要があります。

ただ、家族でサポートしてあげようとしても、専門的な知識が必要なことも多くあり、物理的・時間的に無理な場合もあるでしょう。

交通事故事案に詳しい弁護士に依頼すれば、スムーズかつ納得できる損害賠償請求が行えます。

弁護士基準(裁判基準)が適用できるので、損害賠償額も増える可能性があるのです。

損害賠償額が高くなるほど、保険会社とのやりとりも難しくなるので、早めに弁護士に相談することも検討してみましょう。

まとめ

交通事故の被害者になると、慰謝料や逸失利益などの損害賠償請求が行えます。

ただ、高齢者の場合だと若い人と比べて、死亡率が高かったりケガの治療に時間がかかったりします。

損害賠償額が高くなると相手方の保険会社との示談交渉も長引くことになり、手間がかかってしまう面もあります。

慰謝料や逸失利益の請求で困ってしまったときには、交通事故事案に詳しい弁護士に相談するのも1つの方法です。

納得できる損害賠償請求を行うためにも、早めの相談を心がけてみましょう。

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