2020.10.17 更新

交通事故における逸失利益とは? 具体的な計算方法と増額した事例

「逸失利益ってなに?どうやって計算するの?」

交通事故の被害者となってしまったときには、治療費や慰謝料だけでなくさまざまな項目で損害賠償が行えます。

その中のひとつが逸失利益で、交通事故がなければ将来得られたであろう利益を指します。

この記事では、逸失利益の基本的な捉え方と具体的な計算方法、増額したケースについて判例も交えながら解説していきます。

逸失利益とは? 発生する条件と注意すべきポイント

逸失利益とは、交通事故にあわなければ本来得られたはずの収入のことを指します。

事故によって死亡したり(死亡逸失利益)、後遺障害と認められたり(後遺障害逸失利益)した場合に逸失利益は請求できます。

ケガの治りが悪く、後遺症が残ってしまったときでも、後遺障害認定を受けなければ逸失利益の請求はできません。

損害賠償額にも影響するので、医師による適切な診断を受けて、後遺障害認定を受けましょう。

また、後遺障害逸失利益の請求は、事故前に収入があったことを前提としています。

【請求できないケース】
・無収入
・後遺障害認定を受けていない
・生活保護受給者
※いずれも、死亡逸失利益は請求可能。

会社員などの就労者はもちろん、会社役員や自営業者、フリーランス・専業主婦(主夫)・学生・子どもも請求できます。

雇用形態とは関係がなく、契約社員・派遣社員・パート・アルバイト・日雇いなどに関わらず、請求が認められています。

比較しよう! 慰謝料や休業損害との違い

逸失利益と類似している損害賠償に「慰謝料」や「休業損害」が挙げられます。

それぞれの性質やポイントを把握して、適切な補償を受けることが大切だといえます。

逸失利益・慰謝料・休業損害についてまとめると、以下のようになります。

逸失利益 慰謝料 休業損害
性質 将来得られるはずだった収入に対する補償 事故による精神的なダメージに対する補償 ケガの治療によって失った収入に対する補償
種類 ・後遺障害逸失利益
・死亡逸失利益
・入通院慰謝料
・後遺障害慰謝料
・死亡慰謝料
なし
請求できる条件 ・後遺障害逸失利益の請求には、後遺障害認定が必要
・死亡逸失利益は収入がなくても請求可能
・入通院慰謝料の請求には、交通事故と症状の因果関係を示すことが必要
・後遺障害慰謝料は、後遺障害認定が必要
・死亡慰謝料は本人に代わって、法律で認められた相続人が請求する
・労働により収入を得ている(ただし家事も労働と見なされる)
・ケガによって仕事ができなくなった
注意点 被害者の職業や年齢、後遺障害の等級によって金額が変動する ・慰謝料の算定基準によって、金額が大きく違ってくる
・被害者が死亡もしくは重度の後遺障害を負ってしまったときには損害賠償額も高くなるので、示談交渉が長引きやすい
自主的に休業をしても認められない可能性があるので、医師からケガの治療のために休業が必要であることを認めてもらう

逸失利益と休業損害について補足すると、どちらも交通事故がなければ発生しない費用(消極損害といいます)の一種で、被害者の収入を補償する点においては同じです。

休業損害は、治療のために仕事を休んだことに対する補償です。したがって、治療期間中にしか支払われません。

一方で、逸失利益は、将来の収入を補償するものです。したがって、治療が終了してもなお後遺障害が残ったり、死亡したケースに支払われます。

後遺障害逸失利益の具体的な計算方法

逸失利益の具体的な計算方法は決められているので、加害者側との示談交渉をスムーズに進めるためにも、計算式を把握しておきましょう。

後遺障害逸失利益=①基礎収入額×②労働能力喪失率×③労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

基礎収入額
被害者の年収で考えるものであり、事故前の収入額をベースとします。

②労働能力喪失率
後遺障害の影響が仕事にどれくらいの影響を与えているかを示すものです。
等級ごとに決まっており、以下のようになります。

等級 労働能力喪失率
第14級 5%
第13級 9%
第12級 14%
第11級 20%
第10級 27%
第9級 35%
第8級 45%
第7級 56%
第6級 67%
第5級 79%
第4級 92%
第3級 100%
第2級 100%
第1級 100%

③労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
労働能力喪失期間は、症状固定日から数えて67歳を迎えるまでの年数のことです。
事故にあったのが67歳前後であれば、平均余命期間の2分の1の年数を労働能力喪失期間と見なします。

ライプニッツ係数とは将来発生する利息を控除するために用いる数値を指します。

労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数表はこちら
※国土交通省「就労可能年数とライプニッツ係数表」より

逸失利益として得られる損害賠償金は、本来であれば将来入ってくる収入をまとめて受け取ることになるため、利息分を調整する必要があるのです。

それぞれの用語の意味を正しく理解して、相場に沿った金額で相手方の保険会社と示談交渉を進めましょう。

次に、職業や属性ごとに逸失利益を計算するときのポイントをお話しします。

会社員などの給与所得者のケース

会社員などの給与所得者では、事故前年の年収額を基礎収入として逸失利益を計算します。

【例:年収400万円・25歳・男性・後遺障害14級の場合】
(基礎収入)400万円×(労働能力喪失率)5%×(労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)23.701=約474万円

賞与を含んだ金額であり、勤務先が発行する源泉徴収票や給与明細書が必要です。

例外として、被害者の年収額が賃金センサスの平均賃金額を下回るときは、平均賃金を採用します。(※)
※日弁連交通事故相談センター「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称「赤い本」)参照

なぜなら、現在は収入額が平均賃金より低くても、将来的に収入が増え、上回る可能性もあるからです。特に30歳未満であれば、全年齢平均賃金を基礎収入として計算するのが裁判でも通例になっています。

自営業者のケース

自営業者も給与所得者同様、原則として事故前年の年収額が基礎年収となります。

自営業者などの事業所得者の場合には、事故前年に提出した確定申告書が計算の基準となります。

所得額だけでなく、固定費や納税の有無なども考慮されます。

専業主婦(主夫)・兼業主婦(主夫)のケース

専業の場合は、賃金センサスの全女性労働者の平均賃金をもとに計算します。

兼業ではパートの収入額と女性労働者の平均賃金の高い方を基礎年収とします。

学生や子どものケース

学生や子どもなどの若年者の場合では、賃金センサスの全年齢平均賃金を基礎収入として計算するのが一般的です。

例外として、大学在学中、あるいは進学が見込まれる場合、大卒の賃金センサスでの算出が認められる場合もあります。

【例:15歳・男児・後遺障害7級の場合】
(基礎収入・賃金センサス平成30年男女全年齢平均)497.2万円×(労働能力喪失率)56 %×(労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)23.338=約6498万円

交通事故で死亡したときにも逸失利益の請求はできる

逸失利益は、被害者がもしも交通事故にあっていなければ得られたはずの収入という捉え方であるため、死亡した際にも請求できます。

死亡逸失利益の計算式は、次のとおりです。

死亡逸失利益=基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

生活費控除率とは、被害者が亡くなったことによって支出が不要となった生活費の割合を指します。

家庭における役割や性別などによって、以下のようになっています。

属性や性別 生活費控除率
一家の支柱 30~40%
女性(既婚・独身・幼児を含む) 30~45%
男性(既婚・独身・幼児を含む) 50%

被害者が高齢者で年金を受け取っている場合は、平均余命期間×年金額を基礎収入額と見なして計算します。

増額したケースも! 逸失利益に関する判例

逸失利益の金額は、これまでにお話しした計算方法で決まりますが、中には例外もあります。

特に裁判になった場合は、被害者の職業やケガの症状などによって、個別の事情を考慮して計算がなされ、逸失利益が増額したケースもあります。

過去の最高裁の判例でも、「労働能力喪失率表に基づく労働喪失はあくまで目安であり、同表喪失率以上に収入減少が生じる時は、その実情に応じて請求できる(昭和48年11月16日判決)」とし、労働能力喪失率表を上回る計算を認めています。

判例によっては逸失利益が増額したケースもあるので、しっかりと押さえておきましょう。

【事例1】
ピアノ講師の女性(当時33歳)の頸部痛および頸椎不安定症、右上肢のしびれで後遺障害14級(10号)に認定。後遺障害の部位や程度、等級と職業、性別、年齢的を勘案して、34年間10%の労働能力喪失率を認めた。(神戸地裁・平成12年11月20日判決)
※後遺障害14級の労働能力喪失率は通常5%

【事例2】
47歳の会社員が交通事故で難聴(後遺障害12級相当)に。事故時は役員就任を打診されていた時期だったため、今後の就労状況によっては役員重用がなされない可能性などが考慮され、役員報酬を含めた収入を基礎に、14%の労働能力喪失を認めた。(福岡地裁・平成26年1月30日判決)

【事例3】
59歳のタクシー運転手が外傷性頸部症候群により、後遺障害14級相当の耳鳴り、難聴につき、8年間14%の労働能力喪失を認めた。(岡山地裁・平成5年4月23日判決)
※後遺障害14級の労働能力喪失率は通常5%

逸失利益を含む損害賠償をしっかり受け取るなら弁護士に相談しよう!

逸失利益は損害賠償の一部であり、慰謝料や休業損害、治療費などとは別に加害者側に請求できます。

ただ、請求のためには後遺障害認定の手続きも必要であり、ケガの治療や保険会社とのやりとりと並行して進めるのは大変でもあります。

逸失利益や慰謝料など示談金の算出は保険会社に任せることもできますが、必ずしも受けた損害を反映した金額になるとはかぎりません。

もし、保険会社から提示された示談金に納得できない場合は、交通事故事案に詳しい弁護士に相談してみましょう。

弁護士のサポートを受けることで、後遺障害認定手続きや保険会社とのやりとりをスムーズに進められます。

また、慰謝料も自賠責保険基準よりも高い弁護士基準(裁判基準)で計算される可能性もあります。

損害賠償請求においては、事故の過失割合や後遺障害との因果関係など、専門家でなければ判断が難しい部分も多いといえます。

自分がどのケースに当てはまるのかをチェックしてもらうためにも、1人で悩む前に弁護士に相談するのも選択肢です。

まとめ

交通事故の被害にあってしまった場合には、慰謝料や休業損害の他にも、将来得られるはずだった収入に対する補償である逸失利益を請求できます。

請求するための条件や計算方法を正しく把握して、必要な補償を受けることが大切です。

ただ、逸失利益の請求のためには後遺障害認定の手続きを行わなければならず、何かと手間がかかってしまう面もあります。

示談を成立させるまでの流れをスムーズに進めていくためにも、交通事故事案に詳しい弁護士に相談をしてみましょう。

弁護士のサポートを受けることで、納得のできる損害賠償請求が行える可能性が高まるでしょう。

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