2020.6.11 更新

交通事故の慰謝料は通院が少ないと不利?骨折での損害賠償のポイント

通院回数が少ないと慰謝料は減ってしまうの?

自賠責保険から支払われる交通事故の慰謝料の金額は、通院回数(日数)が関係します。

とはいえ、たとえば骨折のように自然治癒を待つ症状の場合は、それほど通院回数を必要としないケースもあります。

通院回数が少ないといっても、被害者が受けた損害の大きさや精神的負担は変わりありません。

そのため交通事故の慰謝料は通院回数が少ないという理由だけで、必ずしも減額されるとは限らないのです

この記事では、骨折など通院回数が少ないケガの場合の損害賠償請求のポイントについて解説していきます。

通院日数が少ないと減額される?慰謝料算出のポイント

慰謝料が発生する条件

そもそも交通事故の慰謝料は、事故に対する精神的なダメージへの補償という意味合いがあります。

そのため、慰謝料の計算においては被害の大きさが重視され、通院頻度だけではなく治療期間も考慮されます

交通事故の慰謝料を算出するときのポイントは以下の3点です。
・どの基準で算出するか?
・通院日数と通院期間、どちらで算出するか?
・後遺症が残っていないか?

どの基準で算出するか?

慰謝料は「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」のいずれかで計算します。

自賠責保険基準
自動車の保有者が加入を強制されている保険です。
交通事故の被害者に対して最低限の補償を目的としており、もっとも低い基準額になります。
任意保険基準
保険会社が独自で設定している基準です。
金額は保険会社によって異なりますが、多くの保険会社は旧任意保険基準を踏襲した金額としています。
弁護士基準
弁護士会が過去の裁判例をもとに発表している基準。主に弁護士に依頼したときや裁判になったときに採用される基準。
3つの基準のうち、もっとも高い金額が記載されていますが、過去の裁判例を参考にしているため、正当な金額に変わりありません。

自賠責保険基準と弁護士基準(裁判基準)の入通院慰謝料を骨折(通院期間1~6ヶ月)を例として、比較すると以下のようになります。

通院期間 自賠責保険基準 弁護士基準(裁判基準)
1ヶ月 8.4万円 28万円
2ヶ月 16.8万円 52万円
3ヶ月 25.2万円 73万円
4ヶ月 33.6万円 90万円
5ヶ月 42万円 105万円
6ヶ月 50.4万円 116万円

※ひと月の通院回数は10回として算出
※任意保険基準は推定
※弁護士基準は日弁連「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準2020年版」参照

自賠責保険基準<任意保険基準<弁護士基準(裁判基準)の順に高くなる傾向があることを押さえておきましょう。

通院日数と通院期間、どちらで算出するか?

上で示した3つの基準のうち、自賠責保険基準の入通院慰謝料は、以下のような計算式で算出します。

・初診から治療終了までの期間
・実際の通院日数の2倍
上記いずれかの「少ない方」×日額の4,300円
※2020年3月31日以前の事故は日額4,200円

骨折の治療は「骨が自然にくっつくまで待つ」が基本で、頻繁に通院する必要がないケースも多くあります。

そのため、骨折は他のケガよりも「慰謝料が少なくなるのでは?」と思われたかもしれません。

しかし、通院をせずに自宅療養をしている場合であっても、ケガによって生活上の不便を感じていることには変わりません。

通院や治療期間が長期にわたるときには、症状・治療内容・通院頻度などを踏まえて、例外的に通院日数×3.5倍で計算するケースもあります。

ただし、弁護士基準であれば、原則として、治療期間によって慰謝料が算出され、通院頻度は考慮されません

後遺症の有無

ケガが完治せずに後遺症が残ってしまう場合には、慰謝料額が変わる可能性もあります。

ただ、すべての後遺症が関係しているわけではなく、後遺障害の等級認定を受けた場合にかぎります

むちうちなど他覚的な判断が難しい症状では、自覚症状をきちんと診断書に反映してもらうことが大切なので、医師とのコミュニケーションをしっかりと行うことが重要です。

逸失利益も請求できる!症状が残ったら後遺障害認定を申請しよう

また、後遺障害認定を受けると、逸失利益の請求もできるようになります。

逸失利益とは、事故にあわなければ得られたはずの将来的な収入のことを指し、次の計算式で算出します。

逸失利益=基礎収入額×労働能力喪失率×就労可能期間に対応するライプニッツ係数

基礎収入額は事故にあう前の年収をもとに計算し、労働能力喪失率は後遺障害の等級が高くなるほど割合が大きくなります。

ライプニッツ係数は、将来得られるお金を現在受け取る形となるので、利息分を差し引くために用いるものです。

実際に適正な金額の損害賠償請求を行うためには、過去の判例を参考にすることも大切です。

骨折をしたケースで認められた逸失利益についてまとめると、以下の判例があげられます。

【判例1】大阪地裁・平成20年11月26日判決

概要 被害者はバイクを運転中に事故にあい、右腕神経叢損傷と診断される
右上肢の完全麻痺を後遺障害として認定
後遺障害の等級 5級6号(1.上肢の用を全廃したもの)に該当。労働能力喪失率は79%
逸失利益の金額 6,409万5,385円

【判例2】東京地裁・平成23年12月21日判決

概要 被害者は交通事故によって、右股関節の関節機能障害と顔面や腹部などに醜状痕が残る
後遺障害の等級 併合12級、労働能力喪失率は14%
関節機能障害は12級7号(1.下肢の3大関節中の1関節の機能に傷害を残すもの)に該当
醜状痕は14級5号(下肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの)に該当
逸失利益の金額 1,477万1,770円

【判例2】東京地裁・平成23年12月21日判決

概要 交通事故によって左肩関節の可動域が、健側である右肩関節の可動域の2分の1以下に制限されたため、後遺障害として認定される
後遺障害の等級 10級10号(1.上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの)、労働能力喪失率は27%
逸失利益の金額 140万2,596円

「通院頻度が少ない=症状が軽い」と保険会社から誤解される場合もある

病院への通院頻度が少なければ、任意保険会社から「症状が軽い」「すでに治っているのでは?」などと誤解され、治療費の打ち切りなどを告げられてしまう場合もあります。

保険会社の立場からすると、被害者に対して支払う保険金をできるだけ抑えたいという思惑もありますし、保険金詐欺を防止するため、でもあるでしょう。

もしも、保険会社から支払われる治療費が途中で打ち切られてしまっても、医師の指示に従って治療を続けましょう

治療の必要性を判断するのは保険会社ではなく、医師です。
交通事故の被害者にとって治療が必要な状態であれば、保険会社は治療費について損害賠償義務があります。

したがって、保険会社から打ち切りを宣告されたら、主治医に相談し、その回答を元にその治療費の支払いの継続を主張しましょう。

治療費の打ち切りが撤回される可能性もありますし、医学的に必要な治療だと判断されれば、立て替え分の治療費を受けられます。

また「どうしても(任意)保険会社が認めない」ような場合は、加害者側の自賠責保険会社に連絡して、自賠責保険から支払ってもらうことも可能です。

他にも保険会社とのやりとりで悩んでしまうときには、弁護士に相談をしてみるのも1つの方法です。

治療費の支払いを打ち切られたとしても、すぐにあきらめる必要はないのです。

保険会社とのやりとりが面倒と感じたら弁護士に相談してみよう!

ケガの治療を続けながら、プロの保険会社と1人でやりとりを重ねるのは大変でもあります。

提示された慰謝料額に納得できないときには、交通事故事案に詳しい弁護士に相談をしてみましょう。

慰謝料などの請求では、弁護士基準(裁判基準)が適用されるので、増額する可能性もあります。

また、保険会社との示談交渉や後遺障害認定手続きのサポートも受けられるので、心強い味方を得ることにもつながるはずです。

適正な金額の補償を受けるためにも、1人で悩まずに弁護士に相談をしてみることが大切です。

まとめ

交通事故の慰謝料の計算においては、ケガの程度や治療期間の長さといった被害の大きさが金額に影響を与えます。

骨折などの場合は通院回数が少なめであるものの、治療期間全体を総合して判断されるため心配いりません。

しかし、実際には保険会社との示談交渉によって慰謝料額は決まるため、被害者1人で交渉することに不安を感じる人もいるでしょう。

交通事故事案に詳しい弁護士に相談をすることで、納得できる形で慰謝料の請求をすることができます。

保険会社とのやりとりや後遺障害認定の手続きをサポートしてもらえるので、活用を検討してみましょう。

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