2021.4.14 更新

交通事故における「休業補償」と「休業損害」の違いと計算・手続き方法

交通事故のせいで仕事できない…。減った収入は取り戻せる?

交通事故の被害者となってしまい仕事ができないときに、減った収入分を補てんするのが休業補償(損害)です。

受け取れる金額は、職業や収入額などによって異なりますが、専業主婦(主夫)や学生でも補償が受けられます。

ただし、事故による損害賠償額の計算は個別に行う必要があります。
そのため、「どのようなケースに当てはまるのか」正しく把握しておく必要があるでしょう。

この記事では、休業補償(損害)の捉え方や計算方法、手続きの進め方についてお話ししていきましょう。

保険の種類が異なる?休業損害と休業補償の違い

事故のケガによって仕事ができなくなり、減った分の収入を補てんするものが、休業損害もしくは休業補償です。

両者は混同して用いられがちですが、同じものではありません。

・休業損害は自賠責保険への請求
・休業補償は労災保険への請求
といった違いがあり、それぞれ請求できる条件や金額が異なります。

休業損害と休業補償の特徴についてまとめると、以下のとおりになります。
 

休業損害 休業補償
請求先 自賠責保険 労災保険
対象範囲 ・休業によって発生した収入の減少分
・自賠責保険の上限額を超える損害があれば、残額を加害者側に請求する
・勤務中や通勤中の交通事故によるケガ
・勤務中の事故では休業補償給付、通勤中の事故では休業給付の対象となる
対象となる期間 ・交通事故が原因で休業をした期間
・医師の指示による休業期間であり、自己判断で休んだものは含めない
・休業が始まってから、4日目から支給される
計算方法 ・1日あたりの基礎収入額×休業日数 ・給与基礎日額(事故前3ヶ月の1日あたりの平均給与)の60%×休業日数
ボーナスや有給休暇の取り扱い ・休業のためボーナスが減額となった場合には、休業損害として請求可能
・ケガの治療のために有給休暇を利用した場合でも、休業損害の請求はできる
・ボーナスや手当も労働基準法第12条の賃金に該当するものであれば、補償が受けられる
・休業特別支給金として、給与基礎日額の20%が加算される

注意点は、休業損害と休業補償は併用できないことです。

どちらも交通事故による損害を国が補償する制度のため、補償が重複した部分は差し引かれます。

どちらも利用できる場合は、メリットが大きい方を選ぶ必要があります。

休業損害と休業補償のどちらを利用するかは、個別の状況によります。

自賠責保険は補償範囲が広く、仮渡金制度なども設けられているのが特徴です。

ただし、自賠責保険は、補償の上限が120万円と定まっている点には注意が必要だといえます。

被害者自身の過失割合が大きかったり、加害者が自賠責保険だけにしか入っていなかったりする場合では、労災保険を利用したほうが良いケースもあります。

自賠責保険による休業「損害」の計算式と請求方法

自賠責保険における休業損害を正しく請求するためには、計算式や請求方法をきちんと把握しておくことが大切です。

休業損害の計算については、日弁連交通事故相談センターが発行している『交通事故損害額算定基準(青い本)』に、以下のように定められています。

「受傷やその治療のために休業し、現実に喪失したと認められる得べかりし収入額とする」

具体的な計算をするときのポイントについて見ていきましょう。

休業損害の計算式

自賠責保険での休業損害は、職業によって金額の違いはなく、計算式は次の通りです。

休業損害=1日あたり5,700円(2020年4月1日以降の事故では6,100円)×休業日数

1日あたりの金額は会社員などの給与所得者でも、専業主婦(主夫)でも同じです。

ただ、休業損害証明書などを提出することで収入が証明できる場合には、1日あたり19,000円を上限として休業損害が認められます。

休業日数とは、ケガの治療のために仕事を休んだ日数です。

医師の指示によって休業していることを示すために、診断書に休業が必要であることを盛り込んでもらいましょう。

ケガの治療のために有給休暇を使った場合も、休業日数としてカウントされます。

また、休業損害はケガが回復していくにつれて、金額が減らされていく点も押さえておきましょう。

しかし、収入は人それぞれ違います。
「1日あたり5,700円」が先ほど示した青い本でいう「現実に喪失したと認められる得べかりし収入額」とは言い切れないでしょう。

そこで、事故にあう前に得ていた収入をもとにして計算する方法もあります。

休業損害=1日あたりの基礎収入額×休業日数

この場合では、基礎収入額によって休業損害として受け取れる金額にも違いがあるため、個別に考えていく必要があります。

職業ごとにポイントをまとめると、以下の通りです。

・会社員などの給与所得者

計算方法 1日あたりの基礎収入額(事故前3ヶ月の給与合計額)÷90日×休業日数
ポイント 基本給の減額に関しては休業損害証明書を勤務先に作成してもらう。
また事故前年度の源泉徴収票も必要となります。
事故の影響によって賞与の減額がある場合は事故の影響で減額した証拠として賞与減額証明書を作成してもらう。

・自営業者

計算方法 事故前年の確定申告での所得額(収入-必要経費)÷365日×休業日数
ポイント 現実の収入減があった場合に認められることが一般的。
休業日数は通院日数や入院日数の日数とすることが多いです。
また確定申告書が必要となります。

・専業主婦(主夫)

計算方法 賃金センサスにおける全女性の平均年収÷365日×休業日数
※平成30年の全女性の平均年収は382万6,300円
ポイント (兼業主婦(主夫)の場合)パート・アルバイトの1日あたりの基礎収入が、専業主婦の1日あたりの基礎収入額を下回るときには、高いほうを適用する

・無職(求職中・失業中など労働意欲・能力があり、就労の蓋然性がある場合)

計算方法 すでに決定している給与額、もしくは賃金センサスの平均給与額で算出した金額×休業日数
ポイント 兼業主婦(主夫)の場合でパート・アルバイトの収入が、専業主婦の1日あたりの基礎収入額を下回るときには、高いほうを適用する

・学生

計算方法 日給×休業日数
ポイント アルバイトをしている場合は、休業損害が請求できる。給与明細書などをもとに計算する

休業損害の請求方法

休業損害の請求は、相手方の保険会社に対して行います。

ただ、加害者が任意保険に加入していない場合には、自賠責保険会社に請求することになります。

請求のために必要となる書類は、以下のものがあげられます。

・休業損害証明書
・源泉徴収票、給与明細書(給与所得者の場合)
・確定申告書、納税証明書(自営業の場合)
・入院証明書

会社員やパート・アルバイトなどの給与所得者の場合には、勤務先から休業損害証明書を発行してもらいましょう。

勤務日数や労働時間、給与など休業損害を請求するための基本的な情報が記載された書類となります。

証明書に漏れがないことを確認して、保険会社に送付しましょう。

労災保険による休業補償の計算式と請求方法

休業補償は正式には「休業(補償)給付」といい、労災保険から支払われるものです。

会社などに雇用されている状態で、勤務中や通勤中に交通事故の被害者となったときには、労災保険が適用されます。

勤務中の事故の場合は「休業補償給付」、通勤中の事故の場合は「休業給付」がそれぞれ休業開始の4日目から支給される仕組みです。

休業補償の計算式

休業補償の計算は、次の式に当てはめて算出します。

休業(補償)給付=給付基礎日額の60%×休業日数

給付基礎日額は、事故にあう前の3ヶ月の平均給与がベースとなります。

また、休業特別支給金として給付基礎日額の20%が加算されるので、実際には平均賃金の80%の補償が受けられるのです。

休業損害と同じように、ボーナスや各種手当も給付基礎日額に含まれます。

休業補償の請求方法

休業補償を受けるためには、労働者自身が労働基準監督署に対して、請求手続きを行う必要があります。

必要となる書類は、勤務中の事故の場合は「休業補償給付支給請求書」、通勤中の事故の場合は「休業給付支給請求書」となります。

休業期間が長期にわたると1ヶ月ごとに書類を提出しなければならないので、気をつけておきましょう。

勤務先に書類の必要事項を記入してもらい、事業主の記名と押印をもらったうえで労働基準監督署に提出します。

また、労働者が受け取る給付金を勤務先が立て替えて支払う「受任者払い制度」という仕組みもあるので、必要に応じて活用してみましょう。

【特殊なケースのまとめ】転職・ボーナス・有給・産休などの取り扱われ方

休業損害などの損害賠償請求においては、事故にあったときの状況によって、個別に判断していく必要があります。

ここでは、転職中や産休中など特殊なケースについて、それぞれまとめると以下のようになります。

個別のケース 休業損害の有無 ポイント
転職中 ・失業中だと休業損害は請求できない
・すでに内定を得るなどして、今後収入が入る見込みがある場合には請求可能
・内定証明書などが必要
ボーナス ・勤務先に賞与減額証明書を発行してもらうことで、休業損害の請求ができる
・ボーナスは業績にも左右されるので、減額の理由が交通事故によるものであるのか因果関係を明確にしておく必要がある
有給休暇 ・ケガの治療のために有給休暇を使ったときには、休業損害として請求できる
・休業損害証明書に有給休暇を使った日数と損害額を記載することが大切
産休中 ・産休中に勤務先から給与が支払われている場合には、休業損害は請求できない
・給与が支払われていない場合には、賃金センサスをもとに休業損害の請求ができる
・産休を取得した翌年に事故にあったケースでは、事故にあう前の給与が計算のベースとなる

適正な補償を受けるためには、書類を用意したり専門的な知識も必要となったりします。

保険会社が休業損害の支払いに応じてくれないときの対処法

休業損害の請求について保険会社との間でトラブルになってしまったときには、日弁連交通事故相談センターそんぽADRなどに相談することが可能です。

しかし、これらの相談先は自分で弁護士を選べないため、スムーズな解決ができるとはかぎりません。

また、裁判で争う方法もありますが手続きが大変であり、解決までに時間がかかってしまうものです。

1人で手続きを進めることに困ったときには、交通事故事案に詳しい弁護士に相談をしてみるのも1つの方法です。

保険会社とのトラブルを避けるには弁護士に相談してみよう

交通事故における損害賠償は、休業損害や休業補償だけではありません。

慰謝料や治療費などさまざまな項目があり、被害の大きさによって個別に計算していく必要があります。

自分がどのようなケースに当てはまり、どの項目について損害賠償請求できるのかを把握するためには、弁護士に相談をしてみると良いでしょう。

弁護士に依頼をすることで弁護士基準(裁判基準)で算出するため、慰謝料などが増額する可能性もあります。

納得できる形で補償を受けるためには、交通事故事案に詳しい弁護士にサポートしてもらうことも大切です。

まとめ

交通事故の被害にあってしまうと、ケガの治療のために仕事を休まなければならないこともあります。

減収分の補てんとして、休業損害や休業補償を受けることができるので、基本的な仕組みを理解して正しく請求することが重要です。

しかし、適正な金額の補償を受けるためには必要書類を準備するなど、手間や時間もかかってしまうものです。

また、相手方の保険会社が誠実に対応してくれるともかぎらないでしょう。

保険会社のやりとりや手続きに困ったときには、交通事故事案に詳しい弁護士に相談するのも1つの方法です。

プロのサポートを得ることで、早期に解決することを目指してみましょう。

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