2020.7.2 更新

会社役員が請求できる交通事故の慰謝料は?休業損害と逸失利益の捉え方

「会社役員が交通事故にあったら、慰謝料は高くなる?」
「自分だけでなく会社も被害受けてるのだから、しっかり補償してほしい」

慰謝料は、著名人の離婚慰謝料のように「収入に比例するのでは?」とイメージされている方もおられるかもしれません。

しかし、“交通事故の”慰謝料は、原則として職業や地位・年収によって金額が決まるわけではありません。

ケガの大きさや治療期間によって、一定の基準に基づき算出されます。

とはいえ、会社の重役が交通事故によるケガで休まざるを得ない状況になると、会社全体に影響を及ぼす可能性もあります。

そのため、会社役員が交通事故にあったときは、慰謝料だけでなく他の損害賠償を含めて示談交渉していく必要があるのです。

この記事では、慰謝料を含めた交通事故の損害賠償請求のポイントを解説していきます。

会社役員でも交通事故の慰謝料は変わらない!休業損害や逸失利益は異なる

交通事故における慰謝料は、職業や年齢によって請求できる金額に違いはありません。

なぜなら、事故による精神的なダメージに対する補償だからです。

慰謝料額は「被害の大きさ(治療期間や通院回数など)」のほかに、「誰が算出するか?」によって異なります。

■入通院慰謝料の目安

通院期間 自賠責保険基準 任意保険基準 弁護士基準(裁判基準)
1ヶ月 8.4万円 12.6万円 19~28万円
3ヶ月 12.6万円 37.8万円 53~73万円
6ヶ月 50.4万円 64.2万円 89~116万円

※ひと月の通院回数は10回として算出
※任意保険基準は推定
※弁護士基準は日弁連「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準2020年版」参照

このように「誰が算出するか?」は自賠責保険・任意保険・弁護士の3つがあり、どの基準で計算するかで請求できる慰謝料は大きく違ってきます。

自賠責保険基準
国が法律で制定した慰謝料基準で自賠責保険会社が算出する。
交通事故の被害者に対して最低限の補償を目的としており、もっとも低い基準額になります。

任意保険基準
任意保険会社が独自で設定している基準です。
会社によって多少異なりますが、自賠責基準と同等、あるいはやや高めに設定されています。

弁護士基準
弁護士会が過去の裁判例をもとに発表している基準で、主に弁護士に依頼したときや裁判になったときに採用される。

自賠責保険も任意保険もあくまで相手方の保険会社ですし、自賠責保険基準はあくまで国としての最低限度の補償です。

一方で弁護基準は、過去の裁判例を元に作成されています。
どの基準が被害者にとって最適な算出方法なのかは、自ずと決まってくるでしょう。

慰謝料の金額は、職業や地位で変わりませんが、休業損害や逸失利益はといった他の損害賠償であれば、年収に応じて計算される可能性があります。

適正な金額の損害賠償請求を行うためにも、それぞれの項目について正しく把握しておくことが大切です。

休業損害は認められる?役員の種類別での計算方法

休業損害とは、事故のケガによって仕事を休まざるを得なくなったときに、減った分の収入を補償するものです。

ただし、会社役員の場合においては、役員報酬の取り扱われ方に注意が必要です。

役員報酬の中に利益配当分(一般の労働とは関係なく支払われる利益)も含まれていると評価される場合もあるので、損害がないと判断されてしまう可能性もあります。

そのため、役員報酬のうち労働対価として認められる割合によって、休業損害の金額は変わってきます。

休業損害が認められるケースと認められないケースをまとめると、以下のような表になります。

休業損害が認められるケース 休業損害が認められないケース
・定期同額払いを行っている(同じ金額が一定期間ごとに支払われている)
・役員報酬のうち、労働対価として認められる部分(職務内容・年齢・他の役員の報酬との比較などで判断される)
・期の途中で役員報酬が減額されている
・休業しているときも、役員報酬が満額支払われている
・役員報酬のうち、利益配当分にあたる部分
・社外監査役や非常勤役員の場合

会社役員が加害者に対して休業損害を請求するには、実際に収入が減ったことを証明する必要があります。

役員報酬の取り決めについて、取締役会の議事録などを証拠として残しておくことが重要です。

小規模会社の場合

会社の経営規模が小さく、役員が事故にあうことで会社そのものにも損害が発生するケース(売上の減少・外注費の増加など)もあります。

この場合には、会社役員自身の休業損害としてではなく、会社全体の損害として賠償を求めることができます。

会社が小規模であり、被害者の代わりになる人材がいないことなどが条件としてあげられます。

また、休業損害の計算にあたっては、事故にあう前年の確定申告書の所得額から1日あたりの基礎収入額を割り出す点も押さえておきましょう。

社外監査役・非常勤の場合

社外監査役や非常勤の役員という立場であれば、会社に対して労務を提供している割合はあまり多くはありません。

そのため、休業損害として認められないこともあります。

非常勤や名目上の会社役員では、役員報酬に占める利益配当分のほうが大きいと見なされるのです。

同族会社の経営者の場合

会社の主要な役員が家族や親族という場合は、社内での役割やどの程度の貢献を果たしているかによって異なります。

会社の中心的な役割であれば労働対価の部分が大きくなるため、休業損害は認められやすいでしょう。

一方で、それほど中心的な役割ではない場合には、利益配当分が多いと見なされて休業損害が認められないケースもあります。

休業損害の発生条件や計算方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
「交通事故における「休業補償」と「休業損害」の違いと計算・手続き方法」

逸失利益の取り扱いは?計算するときに押さえるべきポイント

逸失利益とは、交通事故にあわなければ将来得られたはずの収入のことを指します。

休業損害のケースと同じように、逸失利益の計算においても労働対価によって算出されます。

逸失利益の計算式は、次の通りです。

逸失利益=基礎収入額×労働能力喪失率×ライプニッツ係数

会社員であれば、基礎収入額は年収として計算されます。
しかし会社役員の役員報酬には、先ほどもお話しした通り、労働の対価ではない利益配当部分も含まれています。

したがって会社役員の場合は、年間の全収入からこの利益配当部分を差し引いた金額を基礎収入額とするのが通例です。

役員報酬のうち役員の労働対価がどのくらいなのかは、次のような事情などをふまえて、事案ごとに判断されます。

・会社の規模
・会社の営業状態
・被害者である役員の職務内容
・被害者である役員の報酬額
・他の役員や従業員の職務内容
・他の役員や従業員の給与等の額

また、会社役員である被害者が死亡してしまったときには、死亡逸失利益が請求できます。

死亡したケースでは、利益配当分を基礎収入額に含めるかどうかが、争点になることもあります。

迅速に解決したいときには弁護士に相談しよう

交通事故の被害者となってしまえば、ケガの治療や損害賠償請求など、何かと手間や時間がかかることも増えるものです。

相手方の保険会社から示談金を提示されても、納得できないケースもあるでしょう。

特に会社役員の場合には、充分な役員報酬を受け取っていると思われて、休業損害や逸失利益を認めてもらえないこともめずらしくありません。

休業損害や逸失利益を認めてもらうためには、役員報酬の中に労働対価が含まれていることを証明する必要もあります。

また、事故処理が長引いてしまえば会社のイメージを損なってしまうこともあるため、早期解決のために弁護士に依頼をするのも1つの方法です。

保険会社とのやりとりを任せられるため、ケガの治療に専念でき、休業損害や逸失利益の請求もサポートしてもらえます。

実際に交通事故の示談交渉においては、弁護士に依頼をする人が年々増えています。

交通事故事案に詳しい弁護士に早めに相談をして、スムーズな形で示談交渉を進めてみましょう。

まとめ

会社役員の立場で交通事故の被害者となってしまった場合でも、請求できる慰謝料額は会社員などと変わりがありません。

しかし、休業損害や逸失利益は役員報酬に占める労働対価の割合が影響するため、職務内容や会社における役割などによって大きく変わってきます。

1つ1つの項目を自分で調べて証明し、示談交渉を進めていくのは手間や時間もかかってしまうものです。

適正な金額を請求して、事故処理を早期に解決するためには、交通事故事案に詳しい弁護士のサポートを得ることも検討してみましょう。

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