2020.9.8 更新

過失割合には影響がある?交通事故の加害者が認知症だったときの対処法

交通事故の被害にあってしまったときには、事故の状況に応じて損害賠償請求を行うことができます。

しかし、加害者が高齢で認知症だった場合には、相手の責任能力から過失を問えるのか不安になってしまうこともあるでしょう。

道路交通法の改正によって高齢ドライバーに対する交通事故対策は進んではいるものの、まだまだ安心できない面もあります。

2018年に警察庁が取りまとめた調査報告によれば、認知機能検査を受けた人のうち「認知症のおそれ」「認知機能低下のおそれ」と判定された人は全体の27%にあたる58万5,843人という結果です。

高齢ドライバーによる死亡事故も増加傾向にあり、高齢社会が進展していくにしたがって、認知機能が低下している人の数は増えていく可能性もあります。

この記事では、交通事故の加害者が認知症だったときに、過失割合や損害賠償請求に与える影響について解説していきます。

交通事故の加害者が認知症だと過失割合はどうなる?

2017年に道路交通法が改正されて、75歳以上のドライバーは高齢者講習の前に認知機能検査を受けることが義務付けられました。

認知症と診断された場合には免許取消などの対象となりますが、検査は3年に一度しか行われないため、高齢者による交通事故が減らない要因にもつながっています。

ただ、損害賠償請求において加害者が認知症の場合は、加害者側に過失責任がないというわけではありません。

交通事故の過失割合はあくまでも、当事者双方の責任によって決められるものであるため、事故の状況によって変化はしてもどちらか一方だけに過失があるというケースは少ないと言えます。

また、実際に損害賠償金を支払うのは保険会社であるため、加害者が認知症であるかは霜害賠償請求には影響がないのです。

自賠法においては過失の有無にかかわらず、法律上の責任を負うことになっているので、被害者は補償を受けられます。

なぜ認知症は過失割合が低いと捉えられがちなのか?

加害者が認知症だと過失割合がない、もしくは低いと思われがちですが、単に認知症という理由だけで免責されるわけではありません。

法律的な面も踏まえながら、加害者側の責任について解説していきます。

民法での責任の有無

民法では第709条において、交通事故の被害者に対して加害者が賠償責任を負うことが定められています(過失責任の原則)。

【民法第709条】
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

ただ一方で、民法第713条では責任能力のない人が他人に損害を与えてしまったときには、賠償責任を負わないとも定められています。

【民法第713条】
精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、 その賠償の責任を負わない。ただし、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りでない。

このような法律上の定めから、認知症のドライバーに対して過失責任を問えないのではないかという疑問も出てきてしまうでしょう。

しかし、単に認知症だからといって賠償責任が免責されるわけではなく、ケースバイケースで判断されます。

加害者に過失があると認められれば、一般の交通事故と同じように損害賠償請求が行えるのです。

監督義務者の責任とは?

認知症は認知力や判断力の低下が見られる症状であるため、故意または過失によって交通事故を起こすケースはそもそも少ないと言えます。

そのため、実際には加害者本人よりも、監督義務者が責任を負う場合が多いのです。

監督義務者とは、加害者と一緒に住んでいる家族などを指します。

認知症を抱えている加害者を日ごろから看護する立場にある家族が、そのまま運転を許容していたケースなどで監督義務者としての責任が問われた事例もあるのです。

高齢ドライバーの法的責任

2017年に改正された道路交通法によって、75歳以上の高齢ドライバーが免許を更新するときには、認知機能検査を受けなければなりません。

検査において問題が見つかったときには、改めて医師による診察を受け、認知症と診断された場合には免許取消の対象となります。

また、高齢ドライバーが信号無視や一時不停止などの違反をした場合にも、同様に認知機能検査が行われます。

車両を運転するときには高齢ドライバーも一般のドライバーと同様にルールを守る必要があり、法的な責任を負っているのです。

運行供用者とは?認知症ドライバーに関する判例

自賠法第3条では、運行供用者責任というものが定められています。

運行供用者とは、車両の所有者やドライバー、運転によって利益を得ている人を指します。

具体的には以下の3つの免責要件を満たさないかぎりは、損害賠償責任を負うことになるのです。

・自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと
・被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと
・自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったこと

また、認知症であると主張したドライバーに賠償責任があることを認めた判例もあります。

【前橋地裁・平成19年10月31日判決】
高速道路を逆走したドライバーが認知症を理由として賠償責任を否認した事案です。裁判所は認知症の症状を認めるだけの証拠がないとして、免責の主張を退けてドライバーの賠償責任があると判決を下しました。

自動車の運転をしていれば、ドライバーとしての責任は基本的に免れるものではありません。

免責要件や過去の判例なども踏まえて、加害者に対して適正な損害賠償請求を行うことが重要です。

まとめ

高齢社会となるにつれて、高齢ドライバーによる交通事故は増加傾向にあります。

そのため、加害者が認知症であった場合には、過失責任を問えるのか不安を感じてしまう場合もあるでしょう。

損害賠償金は相手方の保険会社が支払うものであるため、それほど心配をする必要はありませんが、過失責任や過失割合を巡って示談交渉が難航してしまうケースもあります。

示談交渉でトラブルになってしまったときには、1人で悩んでしまわずに交通事故事案に詳しい弁護士に相談してみましょう。

弁護士に依頼をすることで、早期解決に結びつけやすくなるはずです。

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