2020.11.17 更新

過失相殺ってナニ?損害賠償請求に与える影響と具体的なケース

交通事故を起こしてしまったときには、どちらか一方だけに責任があるというよりも、被害者と加害者の両方に過失があるケースのほうが多いと言えます。

ただ、過失の程度によって被害者が受け取ることができる損害賠償金にも影響が出てくるので、慎重に判断をしていく必要があるでしょう。

示談が成立してしまうと、後から過失割合を覆すのは一般的に難しいため、基本的なとらえ方をしっかり押さえておくことが大切です。

この記事では、過失相殺の考え方を押さえると共に、過失相殺を考える上で注意すべきポイントや裁判での事例などを踏まえて解説していきます。

過失相殺とは?民法でのとらえ方と過失割合との違い

過失相殺とは、交通事故によって生じた損害について、被害者側にも責任があるときにその割合に応じて損害額から差し引くことを指します。

損害賠償については、民法第709条や第722条2項によって定められています。

【民法第709条】:不法行為による損害賠償
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
【民法第722条2項】:損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺
被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。

民法第722条2項の定めによれば、あくまでも被害者に過失があったときとなっているので、もらい事故など被害者に過失がないときには過失相殺は適用されません。

もらい事故では被害者の過失割合がゼロとなるため、加害者側にすべての過失があるとされます。

過失割合とは、交通事故が起こった責任について、当事者が負担する割合のことを指します。

一般的には、過去の判例にもとづいて保険会社から提示されるものであり、話し合いをもとに決められるのです。

相手方から示される過失割合は、個別の事情を反映したものとはかぎらないため、安易にサインをしてしまわずに慎重に判断する必要があります。

どのくらい影響がある?過失相殺が適用されたときの具体的なケース

過失相殺が適用されるときには、過失割合についても念頭に入れておく必要があります。

事故による損害が大きければそれだけ損害賠償額も高くなる傾向にありますが、過失割合の程度によっては大幅に減額となる可能性もあるからです。

過失相殺の具体的な算出の仕方は、以下の計算式にあてはめます。

損害額×(100%-被害者の過失割合)=損害賠償金

また、過失割合が8:2(加害者:被害者)となる場合に、過失相殺がどの程度影響するのかを比較すると次のようになります。

加害者 被害者
過失割合 80% 20%
請求したい金額 300万円 1,000万円
請求できる金額 300万円×0.2=60万円 1,000万円×0.8=800万円
実際に受け取れる金額 0円 800万円-60万円=740万円

過失割合が被害者にも20%あるので、請求したい金額が1,000万円であっても、20%を差し引いた800万円となります。

一方で、加害者側は60万円を請求できるため、過失相殺によって被害者が受け取れる金額は最終的に740万円です。

逆に言えば、過失割合を変更できれば、被害者側が受け取れる金額も変わってくるのです。

物損とは具体的には、車両修理費・レッカー費用・代車代・積載品の損害などを指し、当事者の過失割合を考慮して、損害賠償金から差し引かれるのです。

過失相殺で気をつけるべき3つの注意点

過失相殺を考える上では、気をつけるべき3つのポイントがあります。

具体的にどのような点に注意すべきかを解説していきます。

注意点1:公的保険を使ったときの過失相殺

■労災保険を利用した場合
勤務中や通勤中に交通事故にあってしまったときには、労災保険を利用します。

労災保険では治療費の全額が支払われることになるため、被害者自身が診療時に窓口で負担するものはありません。

そのため、相手方の保険会社が負担する割合も減るため、過失相殺が行われたとしても労災保険を利用しない場合と比べて、損害賠償金の減額幅を抑えられます。

■健康保険を利用した場合
ケガの治療のために健康保険を利用した場合には、相手の保険会社から病院に対して治療費が支払われます。

さらに、健康保険の本人負担分については、過失相殺が行われる前に控除される点も押さえておきましょう。

本来であれば健康保険が負担した治療費については、被害者の過失割合に応じて負担しなければならないものですが、社会保障の一環としてカバーされます。

結果的に、健康保険を使うことによって治療費を損害として取り扱わないことで、損害賠償金は多くなる形となります。

注意点2:損益相殺や素因減額についても押さえよう

損益相殺とは、損害を受けた人が同じ原因にもとづいて利益を得たときに、二重に受け取ることを防ぐために利益分を調整する仕組みのことを指します。

また、素因減額とは交通事故による損害の発生について、被害者自身に原因(既往の疾患など)があるときに損害賠償金を減額するものです。

損益相殺も素因減額も、加害者から受け取る損害賠償金から差し引くものであり、過失相殺もある場合にはそれぞれの減額割合をもとに損害額から控除します。

注意点3:自賠責保険では過失相殺のとらえ方が違う?

慰謝料などの請求では、自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準(裁判基準)のいずれかの基準で計算します。

被害者にも過失がある場合には、その割合に応じて過失相殺が行われるものの、自賠責保険については重大な過失(70%以上の過失)がなければ基本的に減額されません。

そのため、場合によっては任意保険基準や弁護士基準(裁判基準)よりも、受け取れる損害賠償金が多くなる可能性もあります。

たとえば、交通事故の被害者ではなく加害者となってしまった場合には、過失割合も大きくなるので自賠責保険基準による賠償請求のほうが有利になる面もあるのです。

話し合いでは決着がつかない!裁判になったときの過失相殺のポイント

過失相殺に対する裁判所のとらえ方

過失相殺は当事者同士の話し合いによって決められるものですが、思うように話がまとまらずに裁判にまで持ち込まれてしまうケースもあります。

過失相殺についての裁判所の基本的なとらえ方は、民法第722条2項(損害賠償の方法及び過失相殺)が根拠となります。

交通事故などの不法行為のケースでは、裁判所としては被害者の過失について過失相殺をすることもできるし、しなくてもいいと決められているのです。

つまり、交通事故の場合において過失相殺は義務的なものではありません。

被害者側の責任能力

過失相殺では、本人の責任能力の有無についても大事な要素となります。

民法第712・713条によって、未成年者や精神に障害がある人などは、責任能力がないと定められています。

ただし、本人が責任無能力者であっても、監督義務者に責任があるケースもあります。

民法第714条を根拠とするものであり、監督義務者の要件については以下の通りです。

・加害行為者が責任無能力者であること
・その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者(またはその者に代わって責任無能力者を監督する者)であること
・責任無能力者の行為について(責任能力を除いて)不法行為責任が成立しうること
・監督義務者等が法定の監督義務を怠らなかった場合またはその義務を怠らなくても損害が生ずべきであった場合に当たらないこと

また、同乗者に対する責任が発生する場合としない場合があります。

本来であれば交通事故の責任は運転者が負うものであり、同乗者は責任を問われないものです。

しかし、運転者が飲酒や無免許の状態で運転していることを知りながら運転を制止しなかった場合には、同乗者も事故の責任を負わされるケースもあります。

面倒なやりとりを任せたい!弁護士に早めに相談しよう

過失相殺は損害賠償請求に影響を与えるものであるため、納得できないまま示談交渉を進めてしまってはいけません。

ただ、過失割合について折り合わずに加害者側と争ってしまうケースもあるので、被害者が1人で対応するのは難しいところもあります。

示談交渉で悩んでしまう前に交通事故事案に詳しく、実績のある弁護士に相談してみるのも良いでしょう。

面倒な交渉事や書類の作成などを任せられるので、心理的・時間的な負担を軽減できます。

示談交渉が長引いてしまえば必要な補償を受けられずに負担も大きくなってしまうため、早めに相談をすることが大切です。

交通事故の無料相談はこちら

ご相談ください

こんな方は今すぐ相談!

  • 事故の事を誰かに相談したい
  • 保険会社の態度や対応に不満がある
  • 慰謝料の金額や過失割合に疑問がある
相談無料

弁護士法人ステラ

0120-660-163

まとめ

交通事故の被害にあっても、一定の過失があるときには被害者自身も負う形となります。

過失相殺によって受け取れる損害賠償金が少なくなってしまえば、納得のいく補償とならない恐れもあります。

ただ、過失割合について被害者が1人で加害者側と交渉をするのは大変でもあるでしょう。

保険会社とのやりとりや書類の作成を任せられる弁護士に相談をしてみることで、さまざまな負担を軽減してみるのも大切です。

専門的な知識を持った弁護士にサポートをしてもらうことで、納得できる形で損害賠償請求が行えます。

関連記事一覧

交通事故で過失割合10対0になる9つの事例|イラスト付きで解説

「明らかに過失割合10対0だけど保険会社が認めてくれない」 交通事故の過失割合は、加害者の保険会社が過去の判例を元に算出し、被害者に提示します。 この場合、加害者側の保険会...

交通事故の過失割合に納得できない|変更のための3つの方法

「被害者なのに過失割合が0じゃないのは納得できない」 交通事故にあい、知識がない被害者の方が保険会社に提示されたままの過失割合を受け入れてしまい、納得のいかない形で交渉を終えてしまうケー...

交通事故の過失割合が9対1や8対2の被害者必読|損害賠償額が減る理由と対策法

「どう考えても相手が悪いのに過失割合9対1なのはなぜ?納得できない」 「過失割合8対2になる事故ケースが知りたい」 過失割合が8対2や9対1の場合 被害者自身が請求できる金額...

Uターンでの交通事故の過失割合の基準を解説!

「Uターン車にぶつけられたら、過失は相手側にある?」 Uターン完了するまで直進車の進路を妨害してはならないのが原則です。 これは道路交通法25条にも「歩行者又は他の車両等の正常な交...

過失割合の修正要素|保険会社を信じるな!事故ケースごとの判断方法

「保険会社から提示された過失割合に修正要素が適応されていたけど、割合はこれ以上低くならないの?」 「保険会社に過失割合について抗議しても、こちらが素人だと考えて威圧的に対応してくる」 ...

お悩み別ページ

ページランキング

  1. 交通事故で評判の良い弁護士事務所とは?被害者必見の弁護士の選び方
  2. 交通事故で依頼すると後悔する弁護士3つの特徴|体験談も掲載
  3. 後遺障害とは?等級認定の流れと等級表でみる1級~14級の認定基準
  4. 【保存版】交通事故の慰謝料相場はいくら?必ずわかる計算方法まとめ
  5. 交通事故の慰謝料が丸分かり!通院から6ヶ月後のケースではいくら?

カテゴリ一から探す