2021.1.29 更新
後遺障害で生命保険の補償は受けられる?高度障害状態か確認しよう

交通事故で後遺障害が残ってしまった場合、任意保険の補償だけでなく、生命保険からの補償も受けられる可能性があります。
生命保険に加入している人が所定の高度障害の基準を満たせば、生命保険が補償する「高度障害保険金」を受け取ることができます。
この記事では、「後遺障害で生命保険の補償は受けられるのか」「自分は高度障害状態なのか」と疑問を抱える方のために、高度障害状態の具体的な症状や高度障害状態とならなかった場合の補償などについて詳しく説明していきます。
目次
後遺障害に対して生命保険から補償は受けられる?
交通事故による後遺障害への補償として、加害者側から支払われる損害賠償金とは別に、生命保険会社から支払われる「高度障害保険金」があります。
生命保険の保険金は、満期や死亡時だけでなく、被保険者が生命保険会社が定める所定の高度障害状態の基準を満たしていれば、高度障害保険金として受け取ることができます。
生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」によると、平成30年度の生命保険加入による世帯の普通死亡保険金額は、平均2,255万円です。
生命保険契約は、死亡保険金か高度障害保険金かの二択ですから、高度障害保険金が支払われた場合は、その時点で保険契約が終了します。
したがって、後遺障害で高度障害保険金を100%受け取る場合の相場も、上記死亡保険金と同額となります。
後遺障害で生命保険からの補償を受けられる症状とは?
後遺障害で生命保険から補償を受けられるのは、高度障害状態として認められた場合のみです。
高度障害状態とは、病気やけがによる重度の後遺障害として所定の身体機能低下にある状態のことです。
生命保険の契約では、高度障害状態を以下のように定義づけています。
下記表内いずれかの症状に該当すると、死亡保険金と同額の高度障害保険金を受け取ることができます。
生命保険の高度障害状態に定められている症状 | 解 説 | 該当する後遺障害等級 |
---|---|---|
両眼の視力を完全に、全く永久に失ったもの | 矯正視力が両眼とも0.02以下で、以後、回復の見込みがない | 後遺障害第2級相当 |
言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったもの | 言葉で自分の意思を伝えることができない、または、液体かおも湯しか飲み込めない | 後遺障害第3級相当 |
中枢神経系・精神または胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの | ・自力で食物を口まで運ぶことができない ・様式便器を利用しての大小便の排泄ができない ・大小便を排泄した後に、身体の汚れた部分を自力でぬぐうことができない ・Tシャツやトレーナーなどのボタンやチャックがない衣服を自力で着たり脱いだりできない ・横になった状態から、自分で起き上がって座った姿勢を保つことができない ・他人のサポートがないと自分で歩けない ・自力で浴槽に入ったり出たりすることができない |
後遺障害第3級相当 |
両上肢とも手関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの | ・手首以上の場所で切断している ・両腕が全く動かせない、両腕の各関節が完全に麻痺して自力で動かせない ・肩、肘、手首の各関節すべてが完全に固まって動かせない、稼動範囲が通常の運動範囲の1/10以下 |
後遺障害第1級~2級相当 |
両下肢とも足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの | ・両脚を足首以上で切断している ・両脚が全く動かせない、両脚の各関節が完全に麻痺して自力で動かせない ・股、膝、足首の各関節すべてが完全に固まって動かせない、稼動範囲が通常の運動範囲の1/10以下 |
後遺障害第1級~2級相当 |
1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったか、またはその用を全く永久に失ったもの | ・片腕を手首以上で切断し、片脚を足首以上で切断している ・片腕を手首以上で切断し、片脚が全く動かせないまたは片脚の関節が完全に麻痺して自力で動かせない ・片腕を手首以上で切断し、片脚の関節すべてが完全に固まって動かせない、稼動範囲が通常の運動範囲の1/10以下 |
後遺障害第4級~5級相当 |
1上肢の用を全く永久に失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったもの | ・片脚を足首以上で切断し、片腕が全く動かせないまたは片腕の関節が完全に麻痺して自力で動かせない ・片脚を足首以上で切断し、片腕の関節すべてが完全に固まって動かせない、稼動範囲が通常の運動範囲の1/10以下 |
後遺障害第5級相当 |
(引用:公益財団法人生命保険文化センター)
交通事故による後遺障害を補償する自賠責保険では、後遺障害第1級〜第14級まで障害の程度に応じて細かく等級が定められています。
障害が重くなるにしたがって支払われる保険金が高額になるという仕組みです。
生命保険の高度障害保険金の支払い対象となる上記症状は、自賠責保険の後遺障害で最も重い第1級~第5級に該当するものです。
このように、生命保険の高度障害保険金受け取り対象者の障害は、非常に深刻であることが理解できます。
後遺障害と生命保険に関するQ&A
ここでは、交通事故で後遺障害を負った際、生命保険についてのよくある疑問についてお答えします。
後遺障害を負った人はこれから生命保険に加入できる?
後遺障害等級認定を受けたからといって、生命保険の加入が必ず不利になるわけではありません。
ただ、障害の内容が加入しようとする保険の保険金支払い条件に関わるようなケースでは、マイナス要因になることもあります。
事前に保険会社に相談することをおすすめします。
高度障害状態ではないけど補償は受けられる?
生命保険の高度障害状態に該当しない場合でも、医療保険による給付金で入院や通院、手術への補償がなされます。
また、事故の相手が「対人賠償保険」に加入していれば、治療費や慰謝料などを損害賠償金として請求することも可能です。
対人賠償保険は、自賠責保険で補償しきれない分を保険金額に応じて支払うものですから、相手方が加入する保険会社で確認することが可能です。
これら契約内容によって支払い条件なども異なるため、当該保険会社に確認するようにしましょう。
後遺障害で補償をもらうためには適切な障害認定をもらいましょう
高度障害状態に該当しない場合にも、後遺障害による損害賠償金を加害者へ請求することが可能です。
後遺障害に対する賠償金は、精神的苦痛への後遺障害慰謝料や、将来的に得られたはずの利益が得られなくなったことへの補償である後遺障害の逸失利益などがあります。
また、入通院慰謝料や治療費、交通費などが請求できますが、これらの金額は後遺障害認定の等級を基準に決定されます。
後遺障害等級認定の手続きは専門的なことが多く、当事者が一人で適切な等級への認定を求めること自体が、不可能に近いでしょう。
弁護士に適切な等級認定のための手続きを依頼すれば、安心して任せられます。

後遺障害認定でお悩みのときは弁護士に相談してみましょう
後遺障害等級が適正に認定されれば、より納得のいく慰謝料を得ることができます。しかし、事故の後遺症で不自由な生活をする当事者やそのご家族が、慣れない手続きをこなすことは非常に難しいでしょう。
これらの手続きを弁護士に依頼するのも一つの方法です。
弁護士は、過去の裁判の相場にしたがって、加害者が加入する任意保険会社に請求する方法で適正な慰謝料を請求します。
このように、弁護士からさまざまなサポートを受けられることは大きな安心につながります。
まとめ
生命保険でも後遺障害による保険金が受け取れますが、その対象となるには保険会社が定めた高度障害状態であることが条件です。
しかし、高度障害状態に当てはまらない後遺障害をお持ちの方も多くいらっしゃるでしょう。
他には加害者から後遺障害認定による慰謝料が受け取れますが、より高い慰謝料を受け取るには、障害を正しく認定してもらうことが重要です。
より十分な賠償額で後遺障害を補償してもらえるように、弁護士に相談するなどして手続きをスムーズに進めましょう。