2021.1.29 更新
どれに当てはまる?交通事故の後遺症の種類と慰謝料一覧
「後遺症の種類と慰謝料が知りたい!」
交通事故の後遺症と一口にいっても、その種類はさまざまです。
また、後遺症の症状の程度によっては、自動車損害賠償補償法で指定された機関により「後遺障害等級認定」を受けることができます。
後遺障害等級認定では、認定の対象となる後遺症について「1〜14級」の等級で区分されます。
最も症状が重いと判断されれば1級と認定され、2級、3級…と数字が大きくなるにつれ症状は軽くなるという分類です。
後遺障害14級は、最も軽い症状に対して認定されます。
認定される等級によって、受け取れる慰謝料額の相場も異なってくるため、等級認定の手続きは被害者にとって非常に重要です。
ここでは、後遺症の種類と、後遺障害等級別の慰謝料相場について具体的に解説しています。
交通事故における後遺症とは
交通事故における後遺症とは「それ以上治療を続けたとしても、改善も悪化もしない症状」をさし、身体の一部の欠損や内臓の機能障害、まひ、しびれ、醜状など多岐にわたります。
交通事故による負傷にはさまざまな種類があります。なかでも、最も多いのが「むちうち」です。
むちうちとは、首に不自然な衝撃が与えられたことにより生じる「首の捻挫」です。
事故後にむちうちの治療を続けても、「めまい」「吐き気」「倦怠感」などの後遺症が残る場合があります。
交通事故における後遺症のうち、主な症状を部位別に下記の表にまとめているので該当するものがないかチェックしてみてください。

部位 | 症状の分類 |
---|---|
目 | ①視力の障害 →失明(目が見えなくなった)、 視力低下(視力が悪くなった) ②調節機能の障害 →距離に応じてピントを調節する機能等の低下(目の焦点をあわせる能力の低下) ③運動障害 →眼球の動きが悪くなった ④視野障害 →視野が狭まった |
まぶた | ①欠損障害 →まぶたを失った ②運動障害 →まぶたの開け閉めがしにくくなった |
耳 | ①欠損障害 →耳の大部分を欠損した状態 ②機能障害 →聴力の低下(聞こえにくくなった) ③その他の症状 →耳鳴りや耳漏 |
鼻 | ①欠損および機能障害 →鼻軟骨が欠けたことによって呼吸がしにくくなった など ②機能障害 →鼻呼吸ができなくなった、においが分からなくなった、においに鈍感になった など |
口 | ①咀嚼機能障害 →うまくものが噛めない状態 ②言語機能障害 →一定の発音ができないなどの 症状 ③味覚の減退 →味がわからない、分かりにくくなった ④歯の障害 →歯を失った、歯が弱くなった |
神経系 | ①むちうち →首や背中の痛み、めまい、吐き 気、しびれなど ②高次脳機能障害 →記憶障害や注意障害などの認知面 における症状(記憶力や注意力の 低下) ③RSD(CRPS) →反射性交感神経ジストロフィー、 反射性交感神経萎縮症と呼ばれ る。神経性の疼痛(うずくような 痛み)。 |
顔貌、外見 | ①醜形症状 →日常露出する部分(首元や顔、 腕、足など)に、誰が見てもわか るような傷跡が残る場合 |
上肢(肩から手首まで) | ①欠損障害 →上肢の一定部分の欠損 ②機能障害 →関節の動きが鈍る、動かせる範囲 が狭くなるなどの症状 ③変形障害 →骨折の治癒の過程で問題が生じ、 正常ではない状態で固定されて しまった場合(骨折を治療した が、元通りに骨がくっつかなかっ た) |
下肢(股から足首まで) | ①欠損障害 →上肢の一定部分の欠損 ②機能障害 →関節の動きが鈍る、動かせる範囲 が狭くなるなどの症状 ③変形障害 →骨折の治癒の過程で問題が生じ、 正常ではない状態で固定されて しまった場合(骨折を治療した が、元通りに骨がくっつかなかっ た) ④短縮障害 →左右の足の長さが違っている状態 |
内臓または生殖器 | ①呼吸器の障害 ②内臓の障害 ③泌尿器の障害 ④生殖器の障害 ⑤循環器の障害 →いずれも、正常な働きができなく なった状態。たとえば泌尿器の障 害だと尿漏れなど。生殖器の障害 なら、卵子や精子を作れなく なってしまった症状などが該当す る。 |
体幹・長管骨(手足を形成する大きめの骨) | ①変形障害 →服を脱いだ時に見た目でわかる変 形症状 |
手指 | ①機能障害 →変形、可動域の障害など(かたち が変わる、動かせる範囲が狭くな る) ②神経障害 →しびれや痛みなど ③欠損障害 →手指の一定部分の欠損 |
足指 | ①機能障害 →変形、可動域の障害など ②欠損障害 →足指の一定部分の欠損 |
後遺障害等級認定とは?認定の方法ついても
交通事故の後遺症のうち、「損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所」による「等級認定」を受けた症状を「後遺障害」といいます。
後遺障害の等級は症状の程度に応じて14段階に分類され、最も重いのが「1級」、最も軽いのが「14級」です。
等級ごとに後遺障害の慰謝料相場が定められているので、適切な等級認定を受けることが、適切な慰謝料の受領につながります。
なお、慰謝料の相場等については後述しているので、ご確認ください。
後遺障害の等級認定は、加害者の保険会社を通じて手続きを進めるのが一般的です。
後遺症の治療を行った医師に、症状に応じた後遺障害診断書を作成してもらったうえで保険会社に送付すれば、あとの手続きは保険会社が進めてくれます。
具体的な等級認定の手順は、こちらの記事でご確認ください。
後遺障害等級の症状と慰謝料額一覧
後遺障害の等級は1~14級に分けられ、上述のとおり、1級が最も症状が重く、2級、3級と番号が進んでいくほど軽いという認識になります。
認定された等級ごとに後遺障害慰謝料の基準額が定められており、金額の詳細は以下の表のとおりです。

等級 | 後遺障害慰謝料の金額 | 症状 |
---|---|---|
1級 | 3,000万円 | 1. 両眼が失明したもの 2. 咀嚼及び言語の機能を廃したもの 3. 両上肢をひじ関節以上で失ったもの 4. 両上肢の用を全廃したもの 5. 両下肢をひざ関節以上で失ったもの 6. 両下肢の用を全廃したもの |
2級 | 2,590万円 | 1. 1眼が失明し,他眼の視力が0.02以下になったもの 2. 両眼の視力が0.02以下になったもの 3. 両上肢を手関節以上で失ったもの 4. 両下肢を足関節以上で失ったもの |
3級 | 2,219万円 | 1. 1眼が失明し,他眼の視力が0.06以下になったもの 2. 咀嚼又は言語の機能を廃したもの 3. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,終身労務に服することができないもの 4. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し,終身労務に服することができないもの 5. 両手の手指の全部を失ったもの |
4級 | 1,889万円 | 1. 両眼の視力が0.06以下になったもの 2. 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの 3. 両耳の聴力を全く失ったもの 4. 1上肢をひじ関節以上で失ったもの 5. 1下肢をひざ関節以上で失ったもの 6. 両手の手指の全部の用を廃したもの 7. 両足をリスフラン関節以上で失ったもの |
5級 | 1,574万円 | 1. 1眼が失明し,他眼の視力が0.1以下になったもの 2. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 3. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 4. 1上肢を手関節以上で失ったもの 5. 1下肢を足関節以上で失ったもの 6. 1上肢の用を全廃したもの 7. 1下肢の用を全廃したもの 8. 両足の足指の全部を失ったもの |
6級 | 1,296万円 | 1. 両眼の視力が0.1以下になったもの 2. 咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの 3. 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの 4. 1耳の聴力を全く失い,他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 5. 脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの 6. 1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの 7. 1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの 8. 1手の5の手指又はおや指を含み4の手指を失ったもの |
7級 | 1,051万円 | 1. 1眼が失明し,他眼の視力が0.6以下になったもの 2. 両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 3. 1耳の聴力を全く失い,他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 4. 神経系統の機能又は精神に障害を残し,軽易な労務以外の労務に服することができないもの 5. 胸腹部臓器の機能に障害を残し,軽易な労務以外の労務に服することができないもの 6. 1手のおや指を含み3の手指を失ったもの又はおや指以外の4の手指を失ったもの 7. 1手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃したもの 8. 1足をリスフラン関節以上で失ったもの 9. 1上肢に偽関節を残し,著しい運動障害を残すもの 10. 1下肢に偽関節を残し,著しい運動障害を残すもの 11. 両足の足指の全部の用を廃したもの 12. 外貌に著しい醜状を残すもの 13. 両側の睾丸を失ったもの |
8級 | 819万円 | 1. 1眼が失明し,又は1眼の視力が0.02以下になったもの 2. 脊柱に運動障害を残すもの 3. 1手のおや指を含み2の手指を失ったもの又はおや指以外の3の手指を失ったもの 4. 1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又はおや指以外の4の手指の用を廃したもの 5. 1下肢を5センチメートル以上短縮したもの 6. 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの 7. 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの 8. 1上肢に偽関節を残すもの 9. 1下肢に偽関節を残すもの 10. 1足の足指の全部を失ったもの |
9級 | 616万円 | 1. 両眼の視力が0.6以下になったもの 2. 1眼の視力が0.06以下になったもの 3. 両眼に半盲症,視野狭窄又は視野変状を残すもの 4. 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの 5. 鼻を欠損し,その機能に著しい障害を残すもの 6. 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの 7. 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 8. 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり,他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの 9. 1耳の聴力を全く失ったもの 10. 神経系統の機能又は精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 11. 胸腹部臓器の機能に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 12. 1手のおや指又はおや指以外の2の手指を失ったもの 13. 1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの 14. 1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの 15. 1足の足指の全部の用を廃したもの 16. 外貌に相当程度の醜状を残すもの 17. 生殖器に著しい障害を残すもの |
10級 | 461万円 | 1. 1眼の視力が0.1以下になったもの 2. 正面を見た場合に複視の症状を残すもの 3. 咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの 4. 14歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 5. 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの 6. 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの 7. 1手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの 8. 1下肢を3センチメートル以上短縮したもの 9. 1足の第1の足指又は他の4の足指を失ったもの 10. 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの 11. 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
11級 | 331万円 | 1. 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの 2. 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 3. 1 眼のまぶたに著しい欠損を残すもの 4. 10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 5. 両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの 6. 1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 7. 脊柱に変形を残すもの 8. 1手のひとさし指,なか指又はくすり指を失ったもの 9. 1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの 10. 胸腹部臓器の機能に障害を残し,労務の遂行に相当な程度の支障があるもの |
12級 | 224万円 | 1. 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの 2. 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 3. 1 眼のまぶたに著しい欠損を残すもの 4. 10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 5. 両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの 6. 1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 7. 脊柱に変形を残すもの 8. 1手のひとさし指,なか指又はくすり指を失ったもの 9. 1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの 10. 胸腹部臓器の機能に障害を残し,労務の遂行に相当な程度の支障があるもの |
13級 | 139万円 | 1. 1眼の視力が0.6以下になったもの 2. 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの 3. 1眼に半盲症,視野狭窄又は視野変状を残すもの 4. 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの 5. 5歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 6. 1手のこ指の用を廃したもの 7. 1手のおや指の指骨の一部を失ったもの 8. 1下肢を1センチメートル以上短縮したもの 9. 1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの 10. 1足の第2の足指の用を廃したもの,第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの 11. 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの |
14級 | 75万円 | 1. 1眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの 2. 3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 3. 1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの 4. 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの 5. 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの 6. 1手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの 7. 1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの 8. 1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの 9. 局部に神経症状を残すもの |
(以上、自動車損害賠償保障法施行令別表(後遺障害等級表)より抜粋)
認定された後遺障害が重かろうと軽かろうと、被害者には適正な慰謝料を受け取る権利があります。
2019年に公開された「自動車保険の概況」という資料によると、2018年に後遺障害として認定された後遺障害のうち、約6割が14級です。多くの交通事故被害者が、たとえ軽めの後遺症であっても、後遺障害の等級認定をしっかりと行っているのがわかります。また、他の等級に比べると、後遺障害14級の認定がおりやすいのもあきらかです。
最も軽い14級だったとしても、認定されないことには後遺障害慰謝料や逸失利益も算定できないため、認定されたという事実が重要なのです。
14級の後遺障害に認定されやすい症状としては、「むちうち」による首のしびれや痛みがあります。実際に、むちうちの後遺症で後遺障害14級の等級認定を受けるケースは多いです。
また、慰謝料は「誰が算出するか」によって金額が異なります。算出を行うのは、「自賠責保険会社」、「任意保険会社」、「弁護士(裁判所)」のいずれかです。
一般的に、自賠責保険会社による算出額が最も安くなり、弁護士による算出額が最も高くなります。
自分のケースにおける弁護士基準の慰謝料額を知りたい場合は、弁護士に直接相談して聞いてみることをおすすめします。
後遺障害慰謝料を受け取れるのか弁護士に相談するのもおすすめです
「自分の症状が後遺障害等級認定を受けられるのかわからない」など、等級認定について不安や悩みがある場合は、弁護士に相談するのもひとつの手です。
経験が豊富な弁護士であれば、過去の判例知識や等級認定をスムーズに受けるコツなどを知っているので心強いサポートが期待できます。
また、弁護士に相談することで、「弁護士基準」による慰謝料額の計算が可能になります。
弁護士基準であれば、被害者にとって適正な慰謝料を受け取れる可能性が高くなるため、まずは気軽に相談をもちかけてみてはいかがでしょうか。
まとめ
交通事故の後遺症といっても、さまざまな種類があります。
後遺症が残った場合は、医師と相談のうえ、後遺障害の等級認定申請手続きをおこなうのが重要です。
後遺障害の等級認定を受けることで、症状に応じた慰謝料を受け取ることができます。
後遺障害の等級認定について不安や疑問がある場合は、まずはインターネットや書籍で自分のケースと似ている事例を調べてみましょう。
過去の類似事例について知ることが、等級認定や慰謝料額に関する疑問の解消につながる可能性があります。
自力で調べても解決策が分からなかったり、不安や疑問が消えなかったりする場合は弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
ひとりで悩んで解決しない場合は、無料相談などを利用して弁護士へ悩みを打ち明け、お悩み解決の糸口を探ってみてはいかがでしょうか。