2021.3.30 更新
交通事故で歯が痛む…治療の流れと後遺障害の等級認定
交通事故の被害にあってしまったときには、事故後に歯が痛んでしまうケースもあります。
複数の歯が折れてしまったり、口の中をケガしてしまったりしたときには、どのような治療を受けられるのか把握しておくのが肝心です。
また、治療に専念するためにも、治療費をどこか負担してくれるのかも押さえておきましょう。
歯が欠損してしまっている場合には、後遺障害の等級認定を受けられる可能性もあるので、手続き方法も理解しておく必要があります。
歯にまつわる交通事故の補償について、詳しく見ていきましょう。
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目次
歯が痛む原因は?主な治療方法と対応すべきポイント
交通事故によって顔やあごを打撲してしまうと、歯が欠ける・歯がぐらつく・歯が抜けるといった症状が見られます。
大した症状ではないと放置をしてしまうと、後から悪化してしまう恐れがあるので注意が必要です。
歯にまつわる症状としては、次のようなものがあげられます。
症状の種類 | ポイント |
---|---|
歯の打撲 | 歯を打ちつけることでグラついたり、歯肉から出血したりすることがある。歯を支える骨や歯の根にダメージを受けた場合に見られる。 |
歯の脱臼 | 歯の骨に固定されている組織が断裂した状態。歯根膜が断裂した場合や完全に抜け落ちた場合がある。 |
歯牙破折 | 歯が欠けてしまった状態。欠けた部分から感染が起こってしまうと、歯の変色や歯肉に腫れが生じてしまうこともある。 |
歯牙移動 | 歯の位置がずれた状態。矯正装置を使って、歯を移動させる必要がある。 |
歯列不正 | 上下の歯の位置がずれてしまい、噛み合わせに問題がある状態。あごの骨に損傷を受けている場合がある。 |
歯に目立った外傷が見られない場合でも痛みを感じるときには、顎関節症やむちうちが原因になっているケースもあります。
主な治療方法としては、以下の通りです。
治療方法 | 内容 |
---|---|
入れ歯 | 歯型をとって、着脱可能な人工歯と歯ぐきを装着する治療方法。治療の負担は比較的少ない。 |
ブリッジ | 両隣りの歯を削って、橋をかけるように連結した人工歯を装着する治療方法。健康な歯を削ることにもなるため、やや負担がある。 |
アタッチメント | 歯と同じような色でできた樹脂のことであり、治療後には取り除く。歯にかかる圧力を細かく調整する。 |
インプラント | あごの骨にチタン製の人工歯根を埋め込んで、上に人工歯をかぶせる治療方法。外科手術となるため、治療費は高くなりやすい。 |
症状に合わせた治療法は数多くあるので、治療の際にはきちんと説明を受けて、適切な方法を選んでみましょう。
交通事故と歯の痛みの因果関係を示すためにも、事故後にはすぐに歯科医院(口腔外科)を受診することが大切です。
【判例あり】歯の治療費は誰が負担をする?保険会社が認めない場合も
交通事故におけるケガの治療では、病院までの交通費も含めて治療費の全額を加害者側に請求できます。
歯の治療方法の中には高額なものもありますが、治療費として請求できるので安心して処置を受けられます。
ただ、治療が終わる前に相手方との示談を成立させてしまうと、充分な補償を受けられない場合もあるので気をつけましょう。
損害額をきちんと確定させるためにも、完治もしくは症状固定(治療を継続しても症状の改善が見られない状態)となるまで、示談交渉を行わないのが基本です。
また、相手方の保険会社の対応にもよりますが、治療内容によっては保険会社が治療費の支払いを認めてくれないケースもあります。
しかし、過去の判例ではきちんと認められているケースもあるので、保険会社と粘り強く交渉していくことが重要です。
【インプラント治療を巡る裁判】(名古屋地裁平成28年11月30日判決)
被害者は二輪車で走行中に、対向車線から右折進入してきた加害者側と接触し、左前歯を1本喪失。治療方法としてインプラント治療を選んで治療費を請求するものの、その妥当性を巡って裁判となる。判決としてはインプラント治療が妥当であると判断された。
歯が欠けてしまった!後遺障害の等級認定を申請しよう
交通事故によって歯を損傷してしまった場合、3本以上欠けてしまったときには後遺障害として認められる可能性があります。
また、欠けた歯が2本以内であっても、ブリッジなどの治療で歯を削るときには、3本以上として見なされるケースもあるのです。
後遺障害として認められるケースにどのようなものがあるのかを解説していきます。
歯の後遺障害(歯牙障害)とは?
歯の後遺障害の1つとして、歯牙障害があげられます。
歯牙障害は、一定本数以上の歯に対して歯科補綴(しかほてつ)を加えたものを指します。
歯科補綴とは、歯の欠損した部分を人工物で補うことであり、歯科治療においては歯の機能や見た目を回復させることを目的としています。
歯牙障害として該当する後遺障害の等級や症状、慰謝料額については次の通りです。
等級 | 症状(認定基準) | 自賠責保険基準 | 弁護士基準(裁判基準) |
---|---|---|---|
10級4号 | 14歯以上に対し歯科補綴を加えたもの | 187万円 | 550万円 |
11級4号 | 10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの | 135万円 | 420万円 |
12級3号 | 7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの | 93万円 | 290万円 |
13級5号 | 5歯以上に対し歯科補綴を加えたもの | 57万円 | 180万円 |
14級2号 | 3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの | 32万円 | 110万円 |
※自賠責保険基準は2020年4月1日以降のもの。
※任意保険基準は保険会社によって異なるので省略。
※弁護士基準(裁判基準)は日弁連交通事故相談センター「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(赤い本)にもとづく。
歯牙障害は歯科補綴が行われた歯の本数によって等級が決まるものです。
同じ等級であっても、自賠責保険基準による慰謝料よりも、弁護士基準(裁判基準)の慰謝料のほうが高くなる傾向にあります。
等級認定を受けると後遺障害慰謝料の他にも逸失利益が請求できるものの、歯牙障害の場合は仕事に直接影響があるとは認められないケースもあり、逸失利益が否定される可能性があります。
ただ、力仕事で歯をくいしばるようなお仕事で影響があるときには逸失利益が認められる場合もあります。
アナウンサーや教師といった人前で話をする職種などでも、認められる可能性があるのです。
併合障害として等級認定されるケース
交通事故によって歯が欠損すると同時に、顔面を打撲するなどして、咀嚼機能(食べ物を噛む機能)や言語機能(言葉を話す機能)にも障害が出てしまうケースもあります。
あごを骨折するなどして機能障害が生じてしまったときには、併合障害として重いほうの等級か繰り上げた等級が認定されます。
一方で、歯牙障害にもとづくものであれば、複数の障害のうち上位の等級を認定することが決められています。
適正な補償を受けるためにも、主治医に詳しく診察をしてもらい、症状に見合った等級認定を受けることが重要です。
後遺障害の等級認定手続きを進める流れと必要となる書類
後遺障害として認められるためには、等級認定手続きの流れをきちんと押さえておく必要があります。
医師によって後遺障害診断書を作成してもらい、事前認定もしくは被害者請求のどちらかで申請しましょう。
申請のために必要な書類としては、次のものがあげられます。
・後遺障害診断書(歯科専用)
・保険金(損害賠償額)支払請求書
・レントゲンやMRIなどの検査データ
・交通事故証明書
・事故発生状況報告書
・診療報酬明細書
・印鑑証明書
事前認定は保険会社に手続きを任せる方法であり、後遺障害診断書を提出すれば後は認定結果を待つだけです。
一方で、被害者請求は自らすべての書類をそろえる必要があり、申請までに時間がかかってしまいます。
ただ、事前認定は書類に不備があってもそのまま審査が行われるため、実際よりも低い等級で認定される恐れがあるので注意も必要です。
被害者請求では労力や時間はかかったとしても、その分だけ納得できる等級を得られやすくなります。
事前認定・被害者請求のいずれの方法でも、損害保険料率算出機構の審査を経て、認定結果が通知されます。
申請をしてから1~2ヶ月程度の時間がかかるので、症状固定となってからすぐに手続きを始めることが大切です。
後遺障害についてさらに詳しく知りたいときには、以下の記事も参考にしてみましょう。
保険会社とのやりとりに困ったら弁護士に相談しよう!
歯の治療に専念したいと思っても、相手方の保険会社が治療費の支払いになかなか応じてくれない場合もあります。
そのようなときに自力で交渉する方法もありますが、交通事故事案に詳しい弁護士に相談をしたほうが問題の早期解決につながりやすいものです。
弁護士に依頼をすることで、保険会社とのやりとりや示談交渉をすべて任せられます。
また、後遺障害の等級認定手続きもサポートしてもらえるので、時間的にも心理的にも負担を軽減できます。
加入している任意保険に弁護士費用特約がついていれば、費用の負担を気にすることなく相談可能です。
1人で思い悩んでしまう前に、まずは相談をしてみることが大切だといえます。
まとめ
交通事故で歯を損傷してしまった場合には、加害者側に治療費などを請求することができます。
また、後遺障害の等級認定を受けることで、実際の症状に見合った補償を受けられます。
しかし、保険会社とのやりとりや後遺障害の等級認定手続きを被害者自身で行うのは大変でもあります。
適正な補償をスムーズに受けるためにも、交通事故事案に詳しい弁護士に相談をしてみましょう。
専門的なアドバイスが得られ、被害者にとって心強い味方になってくれるはずです。
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