2021.3.30 更新
【事例あり】交通事故の過失割合はいつ・誰が・どう決める?
「保険会社から過失割合が提示されたけど、イマイチ納得できない」
「過失割合って誰が・どうやって決めてるの?」
過失割合は、交通事故の被害者が受け取れる損害賠償額に影響を与えるものです。
それだけに保険会社から一方的に提示された過失割合に納得できない、と思う人もいるでしょう。
まず知っておいて欲しいのは、提示された過失割合に納得できなければ、変更してもらえる可能性がある点です。
そのためにも過失割合は「いつ・誰が・どういった基準で決める」ものなのかも把握しておきましょう。
この記事では、過失割合での代表的な事例や修正要素に触れつつ、慰謝料相場についても解説していきます。
また、過失割合を巡って示談交渉が難航してしまうときの対処法についても紹介します。
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目次
交通事故における過失割合とは?
「過失割合」とは?
過失割合とは、交通事故が発生した責任について、事故の当事者が負担すべき割合を示したものです。
一般的に過失割合の大きいほうを加害者、小さいほうを被害者とする点も押さえておきましょう。
交通事故における過失割合は、道交法や過去の判例にしたがって、約300の事故パターンに分けられ、基準化されています。
基準となる過失割合をもとにして、個別の事故状況に応じて責任の割合が決まってくるのです。
過失割合が損害賠償請求に与える影響
追突事故のように過失割合が10:0となるケースを除いては、被害者と加害者の双方に交通事故の責任が生じるのが一般的です。
被害者側にも事故の責任があるときには、損害額から差し引いた形で賠償が行われます。
この仕組みを過失相殺といい、民法第722条2項によって定められています。
【民法第722条2項】
被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。
たとえば、被害者に500万円の損害があった場合、過失割合が10:0であれば、500万円全額が加害者側より支払われます。
しかし同じケースで過失割合が7:3で示談交渉が成立すると、「500万円×(100%-30%)=350万円」が損害賠償金となります。
また、加害者側にも100万円の損害があったときには、その損害額は「100万円×(100%-70%)=30万円」となります。
よって、加害者側に対する賠償を差し引いた320万円が、実際に被害者が受け取れる損害賠償金となるのです。
過失割合や損害額を巡っては、損害賠償金そのものに影響を与えるため、当事者間でもめやすいといえます。
交通事故での過失割合の決まり方と修正要素
過失割合は過去の裁判での判決などをもとに、事故状況によってある程度パターン化されています。
自動車同士の事故から自動車と歩行者の事故、信号のある/なしに至るまで約300までのぼります。
では、過失割合はどのように決まるのでしょうか?
以下で詳しく解説していきます。
過失割合は誰が決めるか?
過失割合は相手方の保険会社から提示されるケースが多いといえます。
警察による実況見分はあくまでも、事故状況を把握するために行うものであり、過失割合については過去の判例などをもとにして保険会社が伝えてくるのです。
しかし、保険会社から伝えられる過失割合に納得ができないときには、そのまま受け入れる必要はありません。
あくまでも、示談交渉の場において当事者同士の話し合いによって過失割合は決められるものだからです。
ただ、追突事故のケースのように過失割合が10:0となる場合では、自分が加入している保険会社は示談交渉に関与してくれない点に注意をしておきましょう。
加害者側に賠償をする必要がないためであり、この場合は被害者自身が相手方の保険会社と直接やりとりをすることになります。
話し合いによって過失割合が決まらなかったときには、裁判によって争うことにもなるため、時間や労力といった部分で負担になってしまうこともあります。
過失割合はいつまでに決める?
過失割合はいつまでに決めなければならないといったルールはないものの、一般的には損害額が確定してから決めていきます。
ケガの治療が完治もしくは症状固定(治療を継続しても症状の改善が見られない状態)となってからや、車の修理代が確定したタイミングなどです。
過失割合が決まらなければ、結局のところ損害賠償額も決められないので、示談成立までに確定させることになります。(ただし物損の示談時に確定した過失割合がそのままケガの賠償金での過失割合に適用されるとは限りません。)
過失割合を決める基準
過失割合の基準は、道交法のルールにもとづいて過去に起こった同様の事例をもとに判断されます。
ただ、交通事故の状況はケースバイケースでもあるため、過失割合について必ずしも個別の事情を反映しているわけではありません。
時として、被害者側に不利な過失割合となることもあります。
そのため、保険会社から提示される過失割合の他にも判断材料を得るときには、自分で調べてみる方法もあります。
日弁連交通事故相談センターが発行している「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(赤い本)」「交通事故損害額算定基準(青い本)」には過失割合の認定基準表が記載されています。
弁護士に依頼をしたときに、どのような基準で判断されるのかの目安となるでしょう。
また、別冊判例タイムズ(民事交通訴訟における過失相殺率等の認定基準)では、実際に起こった交通事故の事例ごとに過失割合を調べられます。
自分のケースと見比べることができるため、過失割合について調べる材料としては適しています。
過失割合の修正要素
過失割合は基準が決められているものの、事故状況によっては個別の事案を考慮する必要があります。
その際にかかわってくるのが修正要素であり、過失割合の増減に影響を与えます。
具体的な修正要素(車対車の交通事故)としては、次の通りです。
修正要素 | |
---|---|
著しい過失 | ・脇見運転など前方不注視が著しい場合 ・酒気帯び運転 ・時速15キロ以上30キロ未満の速度違反 ・著しいハンドルまたはブレーキの操作ミス |
重過失 | ・居眠り運転 ・無免許運転 ・酒酔い運転 ・時速30キロ以上の速度違反 ・嫌がらせ運転など故意に準ずる加害 |
大型車 | 大型車は運転手の注意義務が高い |
直近右折 | 直進車の至近距離で右折する場合。交差点で直進車が停止線を超えた後の右折など |
早回り右折 | 交差点の中心の内側を進行する右折の方法ではない右折 |
大回り右折 | 中央によらないで行う右折 |
既右折 | 右折しようとする対向直が進車線に入っている時に直進車が注意すれば事故が避けられた場合 |
道交法50条違反の直進 | 交差点などへの進入が禁止される状況で交差点へ進行した場合 |
修正要素に当てはまる側に対して、5~20%程度の過失割合がプラスされます。
修正要素についてさらに詳しく調べたい人は、以下の記事も参考にしてみましょう。
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過失割合ごとの主な事例と損害賠償金の目安
交通事故は事故状況によって、加害者と被害者の過失割合が異なってきます。
また、過失割合が異なれば同じ損害額であっても、最終的に受け取れる損害賠償金に違いがあります。
過失割合によって、被害者の損害賠償額がどれくらいになるのか?
下のようなケースで見ていきましょう。
・被害者側の損害:1,000万円
・加害者側の損害:300万円
※被害者の受け取れる損害賠償金は、物損事故の場合で計算しています。人身事故の場合は、加害者から請求される損害賠償金が自賠責保険で相殺されるケースが多いため。
10対0のケース
加害者 | 被害者 | |
---|---|---|
過失割合 | 100% | 0% |
損害額 | 300万円 | 1,000万円 |
相手方への請求額 | 0円 | 1,000万円 |
受け取れる損害賠償金 | 0円 | 1,000万円 |
主な事例 | ■どちらか一方の車が赤信号で交差点に進入して衝突 ■センターラインを越えて車同士が正面衝突 |
9対1のケース
加害者 | 被害者 | |
---|---|---|
過失割合 | 90% | 10% |
損害額 | 300万円 | 1,000万円 |
相手方への請求額 | 30万円 (300万円×0.1) |
900万円 (1,000万円×0.9) |
受け取れる損害賠償金 | 0円 | 870万円 (900万円-30万円) |
主な事例 | ■信号機のある交差点で赤信号で交差点に進入してきた車と、青信号で交差点に進入してきたものの右折時には赤信号になっていた車との衝突 ■追い越し禁止の交差点で右折しようとする車と、後ろを運転していた車が道路中央を越えようとして衝突 |
8対2のケース
加害者 | 被害者 | |
---|---|---|
過失割合 | 80% | 20% |
損害額 | 300万円 | 1,000万円 |
相手方への請求額 | 60万円 (300万円×0.2) |
800万円 (1,000万円×0.8) |
受け取れる損害賠償金 | 0円 | 740万円 (800万円-60万円) |
主な事例 | ■信号機がある交差点で、青信号で交差点に進入してきた車と、同じく青信号で右折しようとしてきた車が衝突 ■道幅の広い交差点で、直進してきた車と右折しようと交差点に進入してきた車が衝突 |
7対3のケース
加害者 | 被害者 | |
---|---|---|
過失割合 | 70% | 30% |
損害額 | 300万円 | 1,000万円 |
相手方への請求額 | 90万円 (300万円×0.3) |
700万円 (1,000万円×0.7) |
受け取れる損害賠償金 | 0円 | 610万円 (700万円-90万円) |
主な事例 | ■信号機がなく、一方に一時停止の規制がある交差点で、減速していない車と減速していた車が衝突 ■黄色信号で交差点に進入した車が、黄色信号で右折しようとした対向車と衝突 |
6対4のケース
加害者 | 被害者 | |
---|---|---|
過失割合 | 60% | 40% |
損害額 | 300万円 | 1,000万円 |
相手方への請求額 | 120万円 (300万円×0.4) |
600万円 (1,000万円×0.6) |
受け取れる損害賠償金 | 0円 | 480万円 (600万円-120万円) |
主な事例 | ■信号機のない同じ道幅の交差点で、直進する車同士が同じスピードで衝突 ■黄色信号で交差点に進入して直進しようとした車と、同じく黄色信号で進入して右折しようとした車が衝突 |
5対5のケース
加害者 | 被害者 | |
---|---|---|
過失割合 | 50% | 50% |
損害額 | 300万円 | 1,000万円 |
相手方への請求額 | 150万円 (300万円×0.5) |
500万円 (1,000万円-500万円) |
受け取れる損害賠償金 | 0円 | 350万円 (500万円-150万円) |
主な事例 | ■どちらの車も赤信号のときに交差点に進入して衝突 ■直進しようと赤信号で交差点に進入した車と、右折しようと赤信号で交差点に進入した車が衝突 |
もちろん架空の事例ですが、過失割合が少し異なるだけで、被害者が受け取れる損害賠償額がどれ程違うのかがよくお分りいただけるかと思います。
(過失割合が5:5や6:4のようなケースでは、一方が被害者といえないケースもあります)
だからこそ、示談交渉においては双方の認識が異なったり、納得できない、と感じてしまうことが多くなってしまうのです。
過失割合に納得がいかないときの対処法
「保険会社から提示された過失割合に納得できない」
交通事故の過失割合は、多くの場合で示談交渉において保険会社から提示されます。
具体的にいうと示談金の提案と共に「今回の事故の過失割合は〇対〇です」と記載された書面が送られてくるのです。
もちろん、基本的には保険会社も過去の判例をもとに過失割合を決めています。
しかし事故の形態や状況について認識が異なっていたために、被害者にとって納得できない過失割合が提示される可能性は十分にあり得るのです。
では納得できない過失割合を提示された時はどうすればいいのでしょうか?
自力で対処する方法
過失割合について過去の判例をもとにして、妥当なラインを導き出したいときには自分で交渉を進める方法があります。
ただ、膨大な数の判例を1人で調べるとなると、相当な労力と時間がかかってしまいます。
また、自分の主張をうまくまとめられずに、相手方との交渉がなかなか進まないといったケースもあるものです。
示談交渉が思うように進まなければ、ADR(裁判外紛争解決手続)や裁判で争うことになるので、補償を受けるまでに時間がかかってしまうという面もあります。
弁護士にサポートしてもらう方法
自分だけで交渉を進めるときに不安や負担を感じてしまう場合は、弁護士に相談してみるのも1つの方法です。
交通事故事案に詳しい弁護士であれば、妥当な過失割合で交渉がまとまる可能性も高くなります。
過失割合が小さく、被害者の立場であるならば、保険会社とのやりとりを弁護士に任せたほうが時間的・心理的な負担も軽減できます。
また、慰謝料請求において弁護士基準(裁判基準)が適用されるので、適正な補償を受けやすくもなるのです。
加入している任意保険に弁護士費用特約がついていれば、費用の負担を気にせずに弁護士に相談することができます。
まとめ
損害賠償額は過失割合をもとに計算されるので、交通事故の責任の度合いを巡っては、当事者同士で争ってしまうケースもめずらしくありません。
納得できる形で過失割合を決めていくことが大切であるものの、いつまでも示談交渉が続いていては、補償を受ける時期も遅くなってしまいます。
過去の判例を踏まえつつも、相手方との交渉にあたっては弁護士に相談をしてみましょう。
専門的な知識をもった弁護士であれば、被害者にとって妥当な過失割合を導き出すサポートが受けられます。
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